第2章 原子力分野における我が国の国際社会への貢献
2.開発途上国との協力

(1)開発途上国における原子力利用とその見通し

 原子力開発利用は高度な技術を要するため,開発途上国における原子力利用は,先進国と比較するとまだ緒についたばかりといえる。しかしながら,開発途上国においても,発電利用を含め,幅広い分野において原子力利用によるメリットを享受し,経済発展及び国民生活の向上に資していこうという動きが高まってきている。
 原子力発電の開発利用については,第1章で見たように,高い経済成長を遂げつつあり,エネルギー需要の急激な伸びが見込まれる中国,韓国,台湾等において,特に熱心に取り組まれている。しかしながら,原子力の発電への利用は,多額の投資及び建設・運転において高度な技術力が必要となるため,経済基盤,科学技術基盤の脆弱な開発途上国にとっては容易ではない。我が国としては,これまでに蓄積された経験,技術等をこれらの国々に積極的に提供し,支援していくことが重要である。
 特に,原子力発電所でいったん大事故が発生すれば当該国だけでなく,近隣諸国へも被害を与える恐れがあることから,安全対策,安全研究等の分野について,各国の協力ニーズをも踏まえつつ我が国が積極的に協力していくべきものと考えられる。
 一方,医療,工業,農業等の分野における放射線利用,研究炉利用等発電以外の原子力利用については,開発途上国全般にわたって関心が高く,このような分野における原子力利用の進展が期待される。アジア諸国においては,原子力発電を開発利用している国・地域はまだ少ないものの,研究炉利用,放射線利用等は積極的に推進されている。例えば,食品照射は,中国,韓国,台湾,インドネシア,フィリピン,タイ等において積極的に行われているほか,電線被覆材の改良,木材表面塗装等の工業分野,放射線治療,核医学等の医療分野の放射線利用が種々実用化している。


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