第2章 我が国の原子力開発利用の動向
3.主体的・能動的な国際対応の推進-国際社会への貢献

(2)研究開発協力

① 二国間協力
(i) 先進国対応
 先進諸国においては,厳しい財政事情の下でプロジェクトの大規模化に伴う必要資金の確保,研究開発の効率性の追求等の見地から,エネルギー研究開発の国際協力の重要性が認識され,これを積極的に推進しようとの動きが強まっている。
 我が国では,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団及び大学を中心として,米国,西独,フランス,英国,カナダ等と,原子力の安全研究,核融合,高温ガス炉等の研究開発分野について,情報交換,人材交流,共同研究等の協力が活発に行われている。我が国としては,世界共通の利益の追求という観点から,我が国が一定の技術レベルを有する分野・要素技術について,積極的・主体的に先進諸国との国際協力活動を展開することとしている。
(ii) 開発途上国対応
 新興工業経済地域を含む開発途上国については,相手国の国情を勘案しつつ,研究基盤・技術基盤の整備に重点を置き,相手国の原子力開発利用計画の初期段階から,原子力開発レベルに応じ,そのレベルの円滑な向上を促進するような協力を進めていくことが重要である。
 現在,開発途上国との間で我が国が原子力協定を結んでいるのは,資源開発,人材交流等の分野で協力を行っている中国のみであるが,他の諸国についても協力円滑化の観点から,原子力協力協定等協力の枠組みを整備するとともに,協力の成果が相手国に確実に根付くよへう十分配慮するものとする。
 このため,従来から開発途上国の要人・専門家の招聘,原子力関係研究者の交流,国際協力事業団(JICA)による専門家の派遣・受入れ,各種セミナー等の開催を実施している。
 民間においては,(社)日本原子力産業会議がその組織内に国際協力センターを設けて,開発途上国との民間ベースの協力の促進を図っている。
 さらに,民間電気事業者も技術研修生の受入れ,専門家の交流等を行っている。

② 多国間協力
(i) 近隣地域対応
 我が国と地理的・経済的に密接な関係にある近隣アジア地域は,原子力分野において放射線利用,研究炉の利用,原子力発電システムの導入,安全確保対策等の面で多くの共通課題を有している。これらの共通課題の解決に当たっては,これらの地域に限られた資金,人材等研究開発資源を最も効果的・効率的に活用するために,我が国を含めた地域ぐるみの協力が有効であり,その可能性の検討が進められている。
(ii) 国際機関対応等
 我が国は,保障措置,放射性物質輸送基準等IAEAの主催する原子力に関する各種シンポジウム,専門家会合等に多数の専門家を派遣し,情報の収集と交換を行っている。
 核融合の研究開発については,IAEAの下で,日本,米国,EC(ユーラトム)及びソ連が協力して,昭和63年4月から,国際熱核融合実験炉(ITER)共同設計活動を開始した。
 また,我が国は,IAEAの「原子力科学技術に関する研究・開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)」に昭和53年に加盟して以来,放射線・RI利用の分野でアジア地域と協力を行っている。
 なお,昭和63年10月,我が国として初めてIAEAのOSART*を関西電力(株)高浜発電所(3,4号機)に受け入れ,運転の安全性を確保するためのプラントの管理手法,運転手法等について経験交流を行い,同発電所(3,4号機)は可能な限りの最高水準の安全性を持って運転されている等の高い評価を得た。
 放射性廃棄物の処分,原子炉施設の安全性等原子力開発を推進する上で各国共通の問題を解決するためのOECD/NEAのプロジェクトに対しても,我が国は従来から参加しており,専門家の派遣,情報交換,共同実験等を通じて積極的な協力を行ってきている。
 我が国は,IAEA,OECD/NEA等の活動に対し,今後とも引続き積極的に参加し,各機関の特性が最大限に発揮されるよう貢献していくとともに,これらの国際機関の活動を通じて,我が国の原子力活動に対する国際的理解の増進に努めることとしている。
 また,原子力発電の安全性の一層の向上のために,欧米,ソ連をはじめとする電気事業者間において,原子力発電所の運転経験等に関する情報を交換する組織(WANO:World Association of Nuclear Operators)を設立することとしており,現在,所要の準備を進めている。


注) *  OperationalsAfety ReviewIeam世界の原子力発電の安全性,信頼性向上を目指し,IAEAが,加盟国の要請に基づいて原子力発電所の運転管理状況を調査し,国際的に経験交流を行う専門家チーム。


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