第2章 我が国の原子力開発利用の動向
2.原子力研究開発の動向-創造的科学技術の育成

(2)基礎研究及び基盤技術の開発

 科学技術の面から見た原子力技術の総合性及び先端性に着目して,原子力研究を基礎的な領域にまで広げ,また,他の分野との相互交流,連携を深めつつ基礎研究及び基盤技術の開発を進めることにより,革新的な技術や知識が生み出されていくことが期待されている。

① 基礎研究
 基礎研究は,研究者の自由な発想を重視することにより,画期的な成果を期待し得るものである。原子力の分野においても,多様化するニーズに対応し,更に新しいシーズの探索を促進するため,基礎研究を段階的に,かつ,幅広く行い,その充実を図っていくことが重要である。
 我が国では,炉物理・核物理に関する研究,燃料・材料の照射試験,放射性物質の環境中での拡散・移行に関する研究等,種々の分野について,日本原子力研究所をはじめとした国立試験研究機関,大学等が着実な研究を行っている。今後は,科学技術の急速な進歩の中において,原子力の研究開発が常に新しい技術の芽あるいは新しい概念を創出し,研究開発の活力を維持・向上させていくためにも,より一層基礎研究の充実を図っていくこととしている。

② 基盤技術の開発
 我が国の今後の原子力開発利用の推進に当たっては,新しい技術を創出し,ひいては既存の原子力技術体系にブレークスルーをもたらす可能性のある基盤技術の開発を積極的に進めていくことが不可欠である。
 原子力委員会では,昭和62年9月基盤技術推進専門部会を設置し,基盤技術の開発を着実に推進するための方策等について審議,検討を行ってきた。昭和63年7月の報告では,来たるべき21世紀に必要とされる原子力技術体系を構築するため,これまで培ってきた原子力における技術ポテンシャルを活用しながら,従来の原子力技術体系にインパクトを与えるようないわば創造型の技術開発の推進を図ることとしている。
 今後,原子力分野での材料技術,人工知能技術,レーザー技術等の技術開発の進展並びにこれらをもとにした未知の分野における技術の創出が期待されている。


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