第9章 核不拡散
1.核不拡散に関する我が国をめぐる二国間の動向

(参考) 原子力の平和利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定等

(昭和62年11月4日署名)
 新日米原子力協力協定は,前文,本文(16ヵ条),末文及び2つの附属書から成っており,これに関連して合意議事録が作成されている。また,実施取極は,前文,本文(3ヵ条),末文及び5つの附属書から成っており,これに関連して合意議事録が作成されている。これらの主な内容は次の通り。

(1)新日米原子力協力協定
① 両国政府は,専門家及び情報の交換,核物質等の供給並びに役務の提供等について協力し,この協力は,この協定の規定及びそれぞれの国において効力を有する関係条約等に従う。
② この協定の適用を受ける核物質等については,両国政府が合意する場合には,貯蔵,管轄外移転,再処理,形状又は内容の変更及び20%以上の濃縮を行うことができる。両国政府は,貯蔵,管轄外移転,再処理及び形状又は内容の変更に関する合意の要件を,長期性,予見可能性及び信頼性のある基礎の上に満たす別個の取極を締結する。
③ この協定の適用を受ける核物質には,適切な保護の措置がとられる。
④ この協定の下での協力は,平和的目的に限つて行われる。この協定の適用を受ける核物質等は,いかなる核爆発装置のためにも,いかなる核爆発装置の研究又は開発のためにも,また,いかなる軍事的目的のためにも使用してはならない。この規定の遵守を確保するため,この協定の適用を受ける核物質は,国際原子力機関の保障措置等の適用を受ける。
⑤ いずれか一方の政府が,この協定の規定に従わない場合等の一定の場合,他方の政府は,この協定の下でのその後の協力を停止し,この協定を終了させて,この協定の適用を受ける核物質等の返還を要求する権利を有する。
⑥ 現行日米原子力協力協定(以下「旧協定」という)は,この協定が効力を生ずる日に終了し,旧協定の下で開始された協力はこの協定の下で継続され,旧協定の適用を受けていた核物質等は,この協定の適用を受ける。
⑦ 両国政府は,この協定の解釈又は適用に関し問題が生じた場合等において相互に協議するとともに,両国政府間の交渉等によっては解決されない紛争については,その決定が両国政府を拘束する仲裁裁判に付託することを合意することができる。
⑧ なお,実施取極においては,この協定上規制の対象となる貯蔵,管轄外移転,再処理及び形状又は内容の変更について,それらが両国において合意された施設において行なわれること等の一定の条件が満たされる場合には,両国政府が合意すること等が規定されている。

(2)日中原子力協定の締結
 昭和58年9月に北京で開催された第3回日中閣僚会議において,両国の原子力平和利用分野における協力を促進し,発展させるべく政府間で話し合いを進めていくことで日中両国の意見が一致した。
 この結果を受けて,事務レベルの協議を通じ,日中原子力協定の締結に向けて具体的な検討が進められていたが,昭和60年7月の第6回協議において協定の仮署名が行われ,同年7月31日,第4回日中閣僚会議の場で署名の運びとなった。
 その後,同協定は所要の国内手続に付されていたが,我が国においては61年5月21日,国会による承認手続が完了し,また,中国においては同年5月10日に国内手続が終了したことから,同年7月10日,北京において発効のため外交上の公文が交換され,同協定は7月10日付けで発効した。
 なお,中国をめぐる原子力分野における国際協力の動向をみると,フランスは,昭和58年5月にミッテラン大統領が訪中した際,仏中原子力協力覚書を交換している。米国は,昭和58年7月に,2年間にわたり中断されていた米中原子力協議を再開し,協議を重ねた結果,昭和59年4月のレーガン大統領訪中時に米中原子力協定にイニシアルを行い,昭和60年7月23日に署名,同年12月30日発効した。また,西独(昭和59年5月),英国(昭和60年6月)等も中国と原子力協定を締結している。


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