第2章 核燃料サイクル
(参考)諸外国の動向

(4)放射性廃棄物処理処分

 イ)米国
 使用済燃料のままでの処分(地層処分)が考えられているが,軍事用等の高レベル廃液については,ガラス固化し,貯蔵した後,地層処分する計画である。他方で,種々の固化法についての研究開発も行っている。
 低レベル放射性廃棄物は,民間の処分施設において陸地処分を行っているほか,DOE関係施設からのものは,主に連邦政府運営の処分施設において陸地処分を行っている。
 また,昭和57年核廃棄物政策法が成立し,米国における高レベル放射性廃棄物対策の基本枠組が示された。DOEは,この法律に従って,現在,処分場の選定を行っており,昭和61年5月には,処分場のサイト特性確認調査を行う候補地(3ケ所)を選定した。
 ロ)フランス
 使用済燃料を再処理し,高レベル廃液は,ガラス固化し,貯蔵した後,地層処分する計画であり,ガラス固化法としては,AVM(Atelier VitrificationdeMarc-Oule)法*が実用段階であり,マルクールにおいて,昭和53年よりガラス固化体を製造し貯蔵している。また,1989年末頃の運開を目途に,実用規模の固化プラントがラ・アーグに建設中である。
 地層処分については,政府の放射性廃棄物管理局(ANDRA)が責任を負い, ANDRAは,昭和62年2月〜3月に4つの処分場候補地(岩種は,花崗岩,粘土岩,結晶片岩,岩塩の4種類)を選定した。
 低レベル放射性廃棄物は,ラ・マンシュ貯蔵センターで陸地処分を実施している。
 ハ)英国
 使用済燃料を再処理し,高レベル廃液は,ガラス固化して,貯蔵した後,地層処分する方針であり,ガラス固化法としては,AVM法を採用することを決定している。
 低レベル放射性廃棄物は,サイト内貯蔵,陸地処分を行っている他,海洋処分の実績も有している。
 また,昭和57年7月,Nirex**(NuclearIndustryRadioactiVeWaste-Executive)と呼ばれる低・中レベル放射性廃棄物の処理処分を実施する新たな機関を設立した。
 ニ)西独
 高レベル廃液は,ガラス固化して,貯蔵した後,ゴアレーベン(岩塩)に地層処分する計画であり,処分の責任は連邦物理技術院(PTB)が負う。
 ガラス固化法としては,LFCM法***(LiquidFedC-eramicMelter)がベルギーと共同で開発され,プラントが運転されている。
 低レベル放射性廃棄物は,昭和42年から昭和53年までAsseII(岩塩坑)で陸地処分を実施したが,現在は許可手続きの関係で中断している。
 ホ)スイス
 使用済燃料は,すべて外国で処理し,返還されるガラス固化体を国内で地層処分する計画。処分の責任は,電力会社と連邦政府の共同出資で設立された放射性廃棄物全国貯蔵組合(NAGRA)が負い,NAG-RAはスイス北部の花崗岩地帯の12地点で処分場選定のためのボーリング調査等を実施している。一方,処分のための研究は南アルプスのグリムゼル岩盤研究所で深地層試験を実施中である。
 へ)オーストラリア
 高レベル廃液の処理方法として,合成岩石中に放射性核種をとじ込めるシンロック固化法について研究開発を行っている。昭和59年5月には我が国との研究協力に関する口上書を交換しており,ルーカスハイツ研究所と日本原子力研究所を中心とした研究協力が開始された。


* AVM法:フランスが開発したガラス固化法で,高レベル廃液をロータリーキルンで仮焼し,ガラス粉末を加えて溶融炉で高周波加熱により溶かした後,キャニスターに封入する方式である。
* *Nirex :原子力産業放射性廃棄物執行部。
英国原子力公社(UKAEA),英国核燃料会社(BNFL)及び電気事業当局(CEGB,SSEB)により,それらの代理機関として設立され,低・中レベル廃棄物の処理処分を実施する。
* * *LFCM法:高レベル廃液を脱硝,濃縮し,ガラス原料を加えてセラミック製の溶融炉で直接通電により溶かし固化する方法であり,動力炉・核燃料開発事業団が,建設を予定している固化プラントにおいても採用することとしている。


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