第3章 主体的・能動的な国際対応の推進―国際社会への貢献
1.国際対応の新たな動向

(1)二国間対応

(i)先進国対応
 〔これまでの状況〕
 ここ数年,先進諸国においては,厳しい財政事情の下でプロジェクトの大規模化に伴う必要資金の確保,研究開発の効率性の追求等の見地から,エネルギー研究開発の国際協力の重要性が認識され,これを積極的に推進しようとの動きが強まつている。これらの動きは,最近の世界的な景気の停滞により加速され,国際協力は「重要性」から「必要性」へと変化しつつある。
 近年先進諸国と行っている国際協力を,その目的により分類すると以下の3つに大別できる。
① 各国とも共通に当面する課題に対処する目的安全研究,規制情報交換等の安全確保対策,放射性廃棄物の処理処分,原子炉の廃止措置等については,各国とも共通に当面する課題であり,国際的なパブリック・アクセプタンスの観点からも協力が望まれている。
② 研究開発資源の国際的な効率的活用を図る目的核融合,高速増殖炉等のような大型の研究開発プロジェクトにおいては,共通して推進している国の間で国際協力の可能性を追求し,研究開発資源の国際的な効率的活用を図ることが求められている。
③ 我が国が一定の技術水準を有する分野について積極的に推進し,世界に貢献する目的
 高温ガス炉,燃料・材料技術等,我が国が一定の技術水準を有する分野,要素技術について,我が国が主体的に国際協力を進めていくことが望まれている。

 〔今後の方針〕
 以上のような国際協力の必要性の高まりに対応して,我が国は,今後,協力活動を主体的・能動的に展開していくとともに,他国が主体的に展開する協力についても,積極的に参加していく。協力の実施に当たっては,相手国の国情等を十分勘案しつつ,互恵性及び双務性の確保に十分配慮することとする。当面,以下の協力を積極的に実施することとし,長期的目標の下に,国際協力を計画的,段階的に進める。
① 安全確保対策,放射性廃棄物の処理処分,原子炉の廃止措置等については,国際的なパブリックアクセプタンスの観点も含めた協力
② 高速増殖炉の経済性向上に関する研究開発における幅広い国際協力,ヨーロッパ諸国と比肩し得る水準にある高速増殖炉の安全性及び燃料,材料等の要素技術に関する協力
③核融合の要素技術に係る協力の強化と次期装置以降の共同設計等への参加,共同建設の可能性の検討
④ 放射線の高度利用を含む創造的・革新的研究開発の協力
(ii)開発途上国対応
 〔これまでの状況〕
 原子力委員会は,昭和59年12月に「原子力分野における開発途上国協力の推進について」を決定し,開発途上国協力は原子力先進国となった我が国の国際的責務であり,世界の核不拡散体制の確立に貢献していくという我が国の基本的考えに従って,今後,積極的に協力を推進すべきであること,特に,研究基盤,技術基盤の整備が重要であり,開発途上国のニーズに応じ,技術協力の一層の促進に加え人材交流を中心とした研究交流を積極的に推進すべきこと等を明らかにした。
 この方針に従い,昭和60年度から開発途上国との研究交流制度が始められ,その拡充が行われでいる。また,国際協力事業団(JICA)においても海外電力調査会による原子力発電コース,日本原子力研究所による原子力基礎実験コース,放射線医学総合研究所によるアイソトープ・放射線の医学・生物学利用コース及び本年度より日本原子力産業会議による原子力安全規制行政コースを新設し,原子力の各分野で技術協力を行っている。
 民間においては,日本原子力産業会議がその組織内に国際協力センターを設けて,開発途上国との民間ベースの協力の促進を図っている。
 さらに,民間電気事業者も技術研修生の受入れ及び専門家の交流を行っている。
 〔今後の方針〕
 新興工業国を含む開発途上国については,相手国の国情を勘案しつつ研究基盤・技術基盤の整備に重点を置き,開発レベルが円滑に向上するよう協力を進める。なお,これらの協力に当たっては,相手国の協力ニーズを的確に把握し,協力の成果が相手国に確実に根付くよう,長期的観点にたって原子力開発利用計画の初期段階から,総合的な協力を行うよう留意することが必要である。
 現在,開発途上国との間で我が国が原子力協定を結んでいるのは中国のみであるが,他の諸国からも原子力協定等の締結の要望が強いので,協力促進の観点から,原子力協力協定等の協力の枠組みを整備することが望まれる。


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