第3章 主体的・能動的な国際対応の推進―国際社会への貢献

 我が国においては,原子力基本法の中で「進んで国際協力に資する」と規定されているように,原子力開発利用を開始した当初より,国際協力の重要性を認識し,また実際に,米国,英国,フランス等の諸外国と活発な協力活動が行われてきている。新長期計画においては,国際的視点を重視するという考え方を強調しているが,その背景として次の諸点を挙げることができる。
① 世界有数のエネルギー消費国であり,無資源国である我が国は,これまで原子力開発利用に積極的に取り組み,今日では,世界第4位の原子力発電国となっている。原子力開発利用が,石油代替エネルギー源として世界のエネルギー需給の安定化に貢献するという役割を果たしていくためにも,また,平和利用が確保されるためにも,国際的な協調を図っていくことが必要である。近時,我が国が原子力先進国として世界の原子力開発利用の進展により積極的な役割を果たすことへの要請が高まってきている。このため,我が国は,単に自国のエネルギー源の確保という視点のみならず,国際的な共通課題に諸外国と協力して取り組むという視点に立つて原子力開発利用を推進していくことが必要となっている。
② これまでの国際協力は軽水炉技術の導入と国内定着の経緯にも示されているとおり,技術の吸収・習得という点に大きな役割があった。 今日では,我が国の技術力の向上に注目する諸外国から種々の協力要請や期待が高まっている。
 我が国はこれに応えて,より積極的に諸外国と交流・協力を深め,蓄積された技術や経験の交換,新しい技術の創出と提供等を通じて,人類共通の公共的な技術としての原子力技術の強化,向上に貢献することが求められている。
③ 昭和61年4月のチェルノブイル原子力発電所事故によって,原子力安全確保及び緊急時対策についての国際協力の必要性が強く再認識された。我が国の原子力の高い安全性,信頼性が世界的に評価されつつあり,諸外国,とりわけ開発途上国からの協力要請に応えることが期待されている。
④ 現在,我が国は,プルトニウム利用の実用化に向けて,再処理の民間事業化,軽水炉,新型転換炉等によるプルトニウム利用の実証等を進める段階に差し掛かっている。今後,これらを円滑に進めるために,核不拡散,核物質防護を含め,我が国のプルトニウム利用政策に対する国際的な理解と信頼を一層高めるよう努力することが求められている。
 以上のような背景を踏まえ,世界の原子力開発利用が着実な進展を示すことは我が国にとっても極めて重要な意義を持つとの認識のもとに,新長期計画において「我が国が原子力平和利用推進国としての国際的な責務を果たしつつ欧米の主要先進国とともに原子力開発利用の牽引車として国際社会に貢献する」という点が基本目標として掲げられたものである。
 以下において,このような方向を裏付ける最近の我が国をめぐる国際協力の進展状況について(1)国際対応の新たな動向,(2)国内環境整備について述べる。


目次へ          第3章 第1節(1)へ