第1章 原子力発電の定着と今後の展開 ―基軸エネルギーとしての確立
5.プルトニウム利用への展開

〔プルトニウム利用の意義〕
 使用済燃料から回収されるプルトニウムは,国産エネルギー資源として扱うことができ,その利用によりウラン資源の有効利用が図られるとともに,原子力発電の海外依存度を低減させることができる。
 このため,プルトニウムの利用形態としては,発電しながら消費した以上の核燃料を生成することができ,ウラン資源の利用効率で圧倒的に優れている高速増殖炉での利用を基本としている。
 〔最近の状況〕
 しかしながら,今日,軽水炉による発電が定着していること,世界的なエネルギー需要の伸びの鈍化及びこれに伴う原子力発電開発計画の遅れにより当面ウラン需給が緩和基調で推移していくと見られること,高速増殖炉の実用化のためには経済性達成の面でなお大きな研究開発課題が残されていること等から,軽水炉と競合し得る高速増殖炉の実用化時期は従来の2010年ごろよりも遅れる見通しとなった。
 〔今後の計画〕
 このため,新しい長期計画においては,次の方針によりプルトニウム利用の段階的展開を図ることとした。
①当面,軽水炉及び新型転換炉において一定規模のプルトニウム利用を進め,これにより,将来の高速増殖炉時代に必要なプルトニウム利用に係る広範な技術体系の確立及び長期的な核燃料サイクルの総合的な経済性の向上を図る。
②これと並行して高速増殖炉の研究開発を着実に進める。
③2020年代から2030年ごろを目途に,経済性・安全性を含め,軽水炉によるウラン利用よりも優れた高速増殖炉によるプルトニウム利用体系を確立することを目指す。


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