第1章 原子力発電の定着と今後の展開 ―基軸エネルギーとしての確立
4.核燃料サイクルの確立

(3)放射性廃棄物処理処分

(i)低レベル放射性廃棄物
 〔これまでの状況〕
 原子力発電所等において発生している低レベル放射性廃棄物については,気体及び一部の液体廃棄物については,所定の濃度以下であることを確認し,大気中又は海水中に放出し,その他の液体及び固体廃棄物については,発生量を極力低減した後,適切に減容し,固化する等の処理を行って,それぞれの敷地内に安全な状態で貯蔵されており,昭和62年3月末現在,我が国における累積量は200lドラム罐に換算して約67万本分に達している。
 〔今後の処分方針〕
 低レベル放射性廃棄物の最終的な処分方法としては,陸地処分及び海洋処分を行うことを基本的な方針としている。


(注)低レベル放射性廃棄物:原子力発電所等で発生する建屋の換気による排気等の気体廃棄物,作業着の洗濯水,床の洗浄廃液等の液体廃棄物及びペーパー・タオル,作業着,フィルター等の固体廃棄物等の放射能レベルが低い廃棄物。

 このうち陸地処分については,現在,電気事業者が中心となって設立した日本原燃産業(株)が,1991年ごろの操業開始を目途に青森県六ケ所村において比較的浅い地中に処分する計画を進めている。国においては,陸地処分の安全性に関する試験研究等を行うとともに,安全基準,指針等の整備を進めている。
 昭和61年,原子炉等規制法が改正され,低レベル放射性廃棄物の陸地処分については,廃棄物埋設の事業として所要の規制が行われることとなった。引き続き,廃棄物埋設の事業の許可申請を行うことができる放射性廃棄物の濃度の上限値を定める政令等所要の法令の整備が進められている。
 一方,海洋処分については,関係国の懸念を無視して強行はしないとの考え方の下に対処することとしている。

(ii)高レベル放射性廃棄物
 〔これまでの状況〕
 再処理施設において使用済燃料から分離される高レベル放射性廃棄物については,これまで,我が国においては動力炉・核燃料開発事業団東海再処理工場ヌ発生したものが,工場内のタンクに厳重な管理の下で貯蔵されており,その量は,本年3月末現在,溶液の状態で,307m3である。
 今後,日本原燃サービス(株)の計画している民間再処理工場の稼動に伴い生ずる廃棄物や海外再処理に伴う返還廃棄物と合わせて確実に処分するため,現在,処分技術の確立に向けで研究開発が進められている。


(注)高レベル放射性廃棄物:使用済燃料の再処理に伴い,原子炉で燃焼した際に生じた核分裂生成物が分離・抽出される。これを含む溶液等,放射能レベルの高い廃棄物。

 〔今後の処分方針〕
 高レベル放射性廃棄物は安定な形態に固化した後,30年間から50年間程度冷却のための貯蔵を行い,その後,地下数百メートルより深い地層中に処分することを基本的な方針としている。ガラス固化技術の開発については,フランス等において実績が積み重ねられている。我が国でもこれまでガラス固化技術については,動力炉・核燃料開発事業団を中心に研究開発を進めてきている。これらの研究成果等を踏まえて,同事業団では,1990年の運転開始を目途に,東海再処理工場に付設してガラス固化プラントを建設することとし,所要の準備を進めている。また,同事業団では,ガラス固化された高レベル放射性廃棄物等の貯蔵を行うとともに,その処分技術を確立するために必要な試験研究等を行うことを目的とした「貯蔵工学センター」を北海道幌延町に設置することを計画し,昭和60年11月より立地環境調査を実施している。
 高レベル放射性廃棄物の地層処分については,これらの研究開発と並行し,全国的な調査を行い,処分予定地の選定を行う。その後,処分予定地における処分技術の実証を経て,処分場の建設・操業・閉鎖を行う計画である。これに関して,新長期計画では以下のことを確認している。
① 高レベル放射性廃棄物の処分が適切かつ確実に行われることに関しては,国が責任を負うこととし,この一環として,国は,処分事業の実施主体が満たすべき要件を明らかにし,これを踏まえ,国は,処分事業の実施主体を適切な時期に具体的に決定する。
② 処分事業に係る費用は,原子力発電を行う者が負担する。
③ 今後,処分予定地の選定を目指した研究開発及び調査を動力炉・核燃料開発事業団を中核機関として進め,処分予定地の選定は処分事業の実施主体に行わせ,選考の結果については,国が所要の評価等を行って,その妥当性を確認する。

 〔長期的な研究開発〕
 高レベル放射性廃棄物の資源化とその処分の効率化の観点から,①高レベル放射性廃棄物に含まれる核種の半減期,利用目的等に応じた分離(群分離)による有用核種の利用,②長寿命核種の短寿命核種又は非放射性核種への変換(消滅処理)のための研究開発を推進することとしている。


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