第1章 原子力発電の定着と今後の展開 ―基軸エネルギーとしての確立
2.安全の確保

〔ソ連事故調査報告〕
 昭和61年来チェルノブイル原子力発電所の事故の原因解明等に関する調査と我が国の安全確保対策に反映させるべき事項の有無について調査検討を進めてきた原子力安全委員会ソ連原子力発電所事故調査特別委員会は,本年5月,最終報告をまとめ原子力安全委員会に報告した。それによると,我が国において,現行の安全規制やその慣行を早急に改める必要のあるものは見出されず,また,防災体制及び諸対策を基本的に変更すべき必要性は見出されないことが明らかになっている。同時に,同報告書では,従来から認識し実施されているシビア・アクシデント,人的因子及びマン・マシン・インターフェイスの研究の推進,安全意識の醸成,防災対策についてその内容を充実し,より実効性のある対策とすること等の7項目の重要性が指摘されている。


(注1)  シビア・アクシデント:設計基準を大幅に超える事故であって,その機能喪失により,通常の手段では適切な炉心の冷却が確保できなくなるような,構築物,構成材,系統等の損傷を生じせしめる事故。
(注2)  ソ連原子力発電所事故調査特別委員会報告書が指摘した7項目:①個々の設計の改良に応じた適切な安全評価,②異常事態に関する知識の充実及び運転管理面への反映,③安全意識の醸成,④人的因子及びマン・マシン・インターフェイスに関する研究の促進,⑤シビアアクシデントに関する研究の促進,⑥原子力防災体制及び諸対策の充実,⑦原子力の安全に関する国際協力の促進

 〔今後の安全確保対策〕
 今回の長期計画において確認されたように安全確保は原子力開発利用を進めていく際の大前提であり,上記報告書の指摘についても,既に昭和62年度予算において,これらの施策を充実させるための経費が一部盛り込まれているところであるが,引き続きその充実に努め,今後の我が国における安全性の一層の向上に資していくこととしている。
 また,チェルノブイル原子力発電所事故は原子力の安全確保が世界各国の共通の課題であり,各国が協力して原子力の安全を確保していくことの重要性を再認識させた。我が国としてもIAEAマン・マシン・インターフェイス国際会議を開催する等国際機関を通じた協力に積極的に取り組むこととしている。また,本年12月には我が国において近隣諸国を主要な参加国として原子力安全国際シンポジウムを開催するなど,国際的な安全確保に向けてできるかぎりの貢献をしていくこととしている。


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