原子力開発利用長期計画の要点

(1)原子力開発利用の基本的考え方
① 「原子力は,世界のエネルギー問題の解決に大きな役割を果たし得る人類の貴重な知的資源であり,その研究開発は,広範な科学技術の水準向上のための牽引力となる」という意義を踏まえて,着実に原子力開発利用を推進する。
② 原子力開発利用を推進していくに当たっては,「平和利用の堅持」及び「安全の確保」を大前提とする。
(2)原子力開発利用の基本目標
① 原子力をエネルギー供給のぜい弱性の克服に貢献する基軸エネルギーとして位置付け,安全性,信頼性,経済性等の質の向上を重視しつつ開発を推進する。
② 創造型研究開発を指向し,原子力の今後の開発課題に対応するとともに,他の科学技術分野との連携,交流による次代の創造的な科学技術の育成を図る。
③ 原子力平和利用推進国としての国際的責務を果たしつつ,原子力開発利用推進の牽引車として積極的に国際社会に貢献していく。
(3)原子力開発利用の進め方
① 今後とも安全確保対策の充実,安全性向上のための国際協力の推進,原子力開発利用の新たな局面への対応を進め,安全性の一層の向上に努める。
② 軽水炉主流時代の長期化を踏まえつつ,原子力発電を着実に推進する。(2000年において,少なくとも5,300万KW程度)その際,原子炉のみならず核燃料サイクル全般を体系的に整備し,原子力発電を総合的な発電体系として確立させる。
③ ウラン資源を有効に利用し,原子力発電の供給安定性を高めるため,「再処理-リサイクル路線」を基本とする。できる限り早期に軽水炉及び新型転換炉による一定規模のプルトニウム利用を進めて技術の確立と総合的な経済性の向上を図るとともに,2020年代~2030年頃に高速増殖炉によるプルトニウム利用の技術体系を確立させることを目指して,高速増殖炉の研究開発を着実に推進する。
④ 原子力の研究開発においては,将来の技術革新を引き起こし,科学技術全般への波及効果が期待される創造的・革新的領域(原子力のフロンティア領域)を重視し,基礎研究の充実,基盤技術開発の重点的推進及び先導的プロジェクト等の効率的推進を図る。
⑤ 原子力開発利用に関する世界共通の利益の追求,研究開発資源の効率的活用及び原子力平和利用のための国際環境の整備を目指して,主体的・能動的な国際対応を展開する。
⑥ 実用化移行段階を迎えているプロジェクトについては,進展状況に応じて,官民協調の下にそれぞれの役割と技術力を活かして効率的に推進する。また,国は長期的視点に立って基礎的・基盤的な研究開発の方向へ展開し,技術的基盤を確立させる。
 原子力開発利用長期計画の役割と策定経緯
 原子力開発利用長期計画の役割は,原子力開発利用を国民の理解と協力の下に計画的かつ総合的に遂行していくため,原子力開発利用に関する明確なビジョンを広く国民に提示することである。長期計画は今日に至るまで計7回策定されている。以下に,その背景と中心課題をエネルギー分野を中心に記す。


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