第2章 核燃料サイクル
7.核燃料サイクル関連施設の立地

(参考)諸外国の動向

(1)ウラン濃縮

イ)米国
 米国のウラン濃縮工場は,米国エネルギー省(DOE)が所管し,現在,ガス拡散法による3工場がオークリッジ,ポーツマス,パデューカにおいて運転されているが,オークリッジ工場は昭和61年9月以降スタンバイ状態となる予定である。その濃縮規模は合計で27,300トンSWU/年となっている。なお,昭和59年の濃縮ウランの生産量は約11,000トンSWUであった。
 なお,DOEは昭和60年6月に将来の濃縮技術の開発を原子レーザー法(A VLIS)一本に絞り,これにより早期の実用化をめざす一方,当面は,ガス拡散工場の運用の合理化等で対処する旨の新政策を発表したが,その後の展開はDOEのAVLIS開発を含む濃縮事業部門全般の民営化の動向とも関連しやや流動的となっている。

ロ)フランス
 フランスではユーロディフ計画(フランス,イタリア,スペイン,ベルギーイランの共同濃縮事業)に基づき,ガス拡散法による工場がトリカスタンにおいて運転されており,その濃縮規模は10,800トンSWU/年となっている。

ハ)英国
 英国のウラン濃縮工場は,英国核燃料公社(BNFL)が所管し,カーペンハーストにおいてガス拡散法による工場と遠心分離法による工場の2工場が運転されていたが,ガス拡散法による工場(約400トンSWU/年)は昭和57年9月,運転を停止している。遠心分離法による工場はウレンコ計画(英,西独,オランダの共同濃縮事業)に基づくもので,昭和60年末までに約600トンSWU/年に拡張された。

ニ)西独
 西独は,現在,ウレンコ計画に基づき,グロナウに遠心分離法による濃縮工場が昭和60年8月に運転開始し,昭和63年までに400tSWU/年の濃縮規模となる予定である。

ホ)オランダ
 オランダは,ウレンコ計画に基づき,アルメロに遠心分離法による濃縮工場の建設・運転を行っており,60年末で濃縮規模は約920tSWU/年となっている。

(2)再処理

イ)米国
 米国の再処理工場については,モーリスの工場が昭和49年に,ウェストバレーの工場が昭和51年に運転を断念し,またバーンウェルの工場が昭和58年に建設計画を断念した。

ロ)フランス
 フランスの再処理工場は,マルクールとラ・アーグの2ケ所にある。マルクールでは,昭和33年以来天然ウラン1,000トンU/年の処理規模のUP-1工場が運転中である。
 ラ・アーグでは,昭和42年から天然ウラン800トンU/年の処理規模のU P-2工場が運転中である。同工場は,昭和51年に軽水炉燃料処理のための前処理工程等を増設し,以来ガス炉燃料及び軽水炉燃料を再処理しており,昭和61年6月までに累計約1,600トンの軽水炉燃料を処理している。
 さらに,現在軽水炉燃料の再処理規模を拡大するため,新たな前処理工程等の建設が行われており,完成すると処理規模は軽水炉燃料800トンU/年に増強される予定である。
 また,外国からの委託再処理のためUP-3工場(処理規模 軽水炉燃料800トンU/年)をラ・アーグに建設中である。

ハ)英国
 英国の再処理工場は,英国核燃料公社(BNFL)が所管し,セラフィールドに天然ウラン燃料を再処理するため処理規模2,000トンU/年の工場が運転中である。また,セラフィールドにおいて外国から委託再処理のため昭和65年頃の運転開始を目指し,THORPプラント(処理規模 軽水炉燃料1,200トンU/年)の建設を進めている。

ニ)西独
 西独では,主要電力会社12社が設立したドイツ核燃料再処理会社(DWK)が原子力発電所から発生する使用済燃料の再処理を実施することとなっている。
 DWK社は,カールスルーエに再処理用実験プラントであるWAK(処理規模 軽水炉燃料35トンU/年)の運転経験を有し,さらにWAKの運転経験を基に,バイエルン州バッカスドルフにおいて昭和60年代後半の運転開始を目途に350〜500トンU/年規模の再処理工場を建設中である。

(3)放射性廃棄物処理処分

イ)米国
 使用済燃料のままでの処分(地層処分)が考えられているが,軍事用等の高レベル廃液については,ガラス固化し,貯蔵した後,地層処分する計画である。他方で,種々の固化法についての研究開発も行っている。
 低レベル放射性廃棄物は,民間の処分施設において陸地処分を行っているほか, DOE関係施設からのものは,主に連邦政府運営の処分施設において陸地処分を行っている。
 また,1982年放射性廃棄物政策法が成立し,米国における高レベル放射性廃棄物対策の基本枠組が示された。DOEは,この法律に従って,現在,処分場の選定を行っており,本年5月には,処分場のサイト特性確認調査を行う候補地(3ヶ所)を決定した。

ロ)フランス
 高レベル廃液は,ガラス固化し,貯蔵した後,地層処分する計画であり,ガラス固化法としては,AVM(Ate1ier Vitrification de Marc-oule)法*が実用段階であり,昭和60年12月現在で,約1,300本のガラス固化体を作製し貯蔵している。また,1986〜7年頃の運開を目途に,実用規模の固化プラントがラ・アーグに建設中である。
 低レベル放射性廃棄物は,ラ・マンシュ貯蔵センターで陸地処分を実施している。

ハ)英国
 高レベル廃液は,ガラス固化し,貯蔵した後,岩塩層に地層処分する計画である。ガラス固化法としては,LFCM法***(Liquid Fed Ceramic Melter)がベルギーと共同で開発され,プラントが運転されている。処分の実績も有している。
 また,昭和57年7月,Nirex**(Nuclear Industry Radioactive Waste-Executive)と呼ばれる放射性廃棄物の処理処分を実施する新たな機関を設立した。

ニ)西独
 高レベル廃液は,ガラス固化し,貯蔵した後,岩塩層に地層処分する計画である。ガラス固化法としては,LFCM法***(Liquid Fed Ceramic Melter)がベルギーと共同で開発され,プラントが運転されている。
 低レベル放射性廃棄物は,昭和42年から昭和53年までAsseII(岩塩坑)で陸地処分を実施したが,現在は許可手続きの関係で中断している。

ホ)オーストラリア
 高レベル廃液の処理方法として,合成岩石中に放射性核種をとじ込めるシンロック固化法について研究開発を行っている。昭和59年5月には我が国との研究協力に関する口上書を交換しており,ルーカスハイツ研究所と日本原子力研究所を中心とした研究協力が開始された。


(脚注)*AVM法:フランスが開発したガラス固化法で,高レベル廃液をロータリーキルンで仮焼し,ガラス粉末を加えて溶融炉で高周波加熱により溶かした後,キャニスターに封入する方式である。
**Nirex:原子力産業放射性廃棄物執行部。
英国原子力公社(UKAEA),英国核燃料公社(BNFL)及び電気事業当局(CEGB,SSEB)により,それらの代理機関として設立され,低・中レベル廃棄物の処理処分を実施する。
***LFCM法:高レベル廃液を脱硝,濃縮し,ガラス原料を加えてセラミック製の溶融炉で直接通電により溶かし固化する方法であり,動力炉・核燃料開発事業団が,建設を予定している固化プラントにおいても採用することとしている。


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