第1章 原子力発電
5.原子炉の廃止措置

(米国)

 米国では,昭和60年において,新たに5基,昭和61年において4基,計約1,077万キロワットが運転を開始したことによって,昭和61年6月末現在,95基,約8,417万キロワットの原子力発電所が稼動しており,世界の原子力発電規模の約32%を占める世界最大の原子力発電国となっている。また,昭和60年の実績では,原子力による発電電力量は約3,837億キロワット時で総発電電力量の約15.5%に達し,原子力発電は米国の電力供給に大きく貢献している。
 一方,電力需要の伸びの鈍化,複雑な許認可手続き等の建設期間の長期化と高金利等による建設費の高騰等により,1970年代から計画中,建設中の原子力発電所のキャンセルが相次いでいた問題も,昭和60年に入ってからはキャンセルは発生しておらず,また昭和54年以来途絶えている原子力発電所の新規発注についても,特に米国北東部地域では将来の電力不足の懸念から,原子力発電所の新規発注について原子力関係者からの期待も高まっている。
 また,米国では,昭和61年3月,原子力発電,石炭,省エネルギーを3本柱とする「第5次国家エネルギー計画(NEPP-V)」が米国議会に提出されたが,原子力発電開発については,①原子力許認可システムの改善,②安全で注意深い放射性廃棄物処分,③研究開発計画の集中化,④一般公衆への教育,⑤原子力技術輸出の障壁を取り除くこと等の政策を強力に推進し,将来も原子力技術の改良に努力を傾注していくなら1990年代においても石炭に次ぐ第2の電源として原子力発電の果たす役割の重要性は増大するとしている。


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