第1章 原子力発電
3.原子力発電所の立地関連状況

(2)原子力発電所等の立地促進

 原子力発電所等の立地地点の確保は,原子力発電を推進する上で重要な課題である。原子力発電のエネルギー供給上の重要性にかんがみ,原子力発電所の立地には最大限の努力を傾注する必要があり,地域の実情を踏まえつつ,電気事業者及び関係行政機関において積極的な取り組みが行われている。

イ)広報活動等の実施
 原子力に対する国民の理解を求め,その開発利用を一層円滑に推進するため,テレビ・出版物等の活用,講演会・各種セミナーの開催等により広報活動を積極的に行っている。
 原子力発電所等の立地を円滑に進めるために,立地予定地域のオピニオンリーダーを対象とした原子力講座等を開催するとともに,原子力発電所等の立地の初期段階における地元住民の理解と協力を得るため,国自らが広報活動を展開する等の施策を講じるとともに,地方公共団体の行う広報活動等への助成を行っている。
 また,電源立地調整官等の機動的活動により,原子力発電所の立地に係る地元調整を推進するとともに,原子力発電所等の設置された県については原子力連絡調整官による地元と国との連絡調整を図っている。さらに,昭和61年8月には,核燃料サイクル施設等の立地に係る地元と国との密接な連絡調整を図るため青森原子力連絡調整官事務所を新設した。
 昭和61年4月26日,ソ連ウクライナ地方チェルノブイル原子力発電所で発生した事故によりヨーロッパ近隣諸国のみならず遠く隔れた日本でも放射性物質が検出され,国民の間に放射能影響や原子力発電に対する不安感を生じさせる結果となった。
 このため,ソ連原子力発電所事故についての正確な情報を迅速に国民へ提供することに努めるとともに,日本への放射能影響と日本の原子力発電所の安全性についての国民の正しい理解を得るべく地元説明会の開催や,テレビ,ラジオ,雑誌,リーフレット等の各種広報媒体による幅広い広報活動をくり広げた。

ロ)電源三法の活用
 発電用施設周辺地域整備法等のいわゆる電源三法を活用し,引き続き,原子力発電施設等の周辺住民の福祉の向上に必要な公共用施設の整備を進めるとともに,施設周辺の環境放射能の監視,温排水の影響調査,防災対策,原子力発電施設等の安全性実証試験等を促進し,原子力発電施設等の立地の円滑化を図っている。
 特に,昭和61年度には,新たに,次のような施策を実施した。
(i)「電源立地促進対策交付金」について,原子力発電施設に係る交付金単価の特別措置(450円/キロワット→600円/キロワット)を,昭和65年度末までに着工する施設についても適用できるよう延長するとともに,整備できる公共用施設に,信号機及び林業試験場を追加した。
(ii)「原子力発電施設等周辺地域交付金」について,交付対象となる原子力発電施設等の着工年限を5年間延長し,昭和65年度末までとした。
(iii)「原子力発電施設等緊急時安全対策交付金」について,防災講習会開催等事業に係る交付金の交付限度額の増額を行うとともに,国が予測計算した緊急時迅速放射能影響予測データ等の受信システムの整備を交付対象事業として追加した。


目次へ          第1章 第3節(3)へ