第2章 核燃料サイクル

(参考)諸外国の動向

(1)ウラン濃縮

イ) 米国
 米国のウラン濃縮工場は,米国エネルギー省(DOE)が所管し,現在,ガス拡散法による3工場がオークリッジ,ポーツマス,パデューカにおいて運転されている。その濃縮規模は合計で27,300トンSWU/年となっている。なお,昭和59年の濃縮ウランの生産量は約11,000トンSWUであった。
 またDOEでは,昭和60年6月5日にウラン濃縮事業に関する以下の内容の新戦略を発表した。
○ 原子レーザー法(AVLIS)を遠心分離法より優位の技術として選択する。
○ 現在稼動中のガス拡散法による3工場のうち,オークリッジ工場をスタンバイ状態とする。なお,残る2工場で2000年までの濃縮役務の供給は可能である。
○ 現在ポーツマスに建設中の遠心分離法の工場に対する政府の関与を中止する。
 今回の米国DOEの決定は,ウラン濃縮技術のチェック・アンド・レビューに当たって,長期的観点からの評価に重きを置いた結果,将来大幅なコストダウンの可能性があるレーザー法が遠心分離法より有望視されたものである。

ロ) フランス
 フランスではユーロディフ計画(フランス,イタリア,スペイン,ベルギー,イランの共同濃縮事業)に基づき,ガス拡散法による工場がトリカスタンにおいて運転されており,その濃縮規模は10,800トンSWU/年となっている。

ハ) 英国
 英国のウラン濃縮工場は,英国核燃料公社(BNFL)が所管し,力一ペンハーストにおいてガス拡散法による工場と遠心分離法による工場の2工場が運転されていたが,ガス拡散法による工場(約400トンSWU/年)は昭和57年9月,運転を停止している。遠心分離法による工場はウレンコ計画(英,西独,オランダの共同濃縮事業)に基づくもので,昭和58年末までに約400トンSWU/年に拡張された。

ニ) 西独
 西独は,現在,ウレンコ計画に基づき,グロナウに遠心分離法による濃縮工場の建設を行っており,昭和61年から400トンSWU/年の濃縮規模となる予定である。

ホ) オランダ
 オランダは,ウレンコ計画に基づき,アルメロに遠心分離法による濃縮工場の建設・運転を行っており,昭和58年3月末で濃縮規模は約600トンSWU/年となっている。

(2)再処理

イ) 米国
 米国の再処理工場については,モーリスの工場が昭和49年に,ウェストバレーの工場が昭和51年に運転を断念し,またバーンウェルの工場が昭和58年に建設計画を断念した。

ロ) フランス
 フランスの再処理工場は,マルクールとラ・アーグの2ケ所にある。マルクールでは,昭和33年以来天然ウラン1,000トンU/年の処理規模のUP-1工場が運転中である。
 ラ・アーグでは,昭和42年から天然ウラン800トンU/年の処理規模のUP-2工場が運転中である。同工場は,昭和51年に軽水炉燃料処理のための前処理工程等を増設し,以来ガス炉燃料及び軽水炉燃料を再処理しており,昭和60年1月には軽水炉燃料1,000トンUの再処理を達成した。
 さらに,現在軽水炉用燃料の再処理規模を拡大するため,新たな前処理工程等の建設が行われており,完成すると処理規模は軽水炉燃料800トンU/年に増強される予定である。
 また,外国からの委託再処理のためUP-3プラント(処理規模軽水炉燃料800トンU/年)を建設中である。

ハ) 英国
 英国の再処理工場は,英国核燃料公社(BNFL)が所管し,セラフィールドに天然ウラン燃料を再処理するため処理規模2,000トンU/年の工場が運転中である。また,セラフィールドにおいて外国から委託再処理のため昭和65年頃の運転開始を目指し,THORPプラント(処理規模軽水炉燃料1,200トンU/年)の建設を進めている。

ニ) 西独
 西独では,主要電力会社12社が設立したドイツ核燃料再処理会社(DW K)が原子力発電所から発生する使用済燃料の再処理を実施することとなっている。
 DWK社は,カールスルーエに再処理用実験プラントであるWAK(処理規模35トンU/年)の運転経験を有し,さらにWAKの運転経験を基に,昭和60年代後半の運転開始を目途に350〜500トンU/年の規模の実用再処理工場の建設を計画しており,昭和60年2月にはバイエルン州バッカスドルフへの立地が決定したところである。

(3)放射性廃棄物処理処分

イ) 米国
 使用済燃料のままでの処分が考えられているが,軍事用等の高レベル廃液については,ガラス固化し,貯蔵した後,地層処分する計画である。他方で,種々の固化法について研究開発も行っている。
 低レベル放射性廃棄物は,民間の処分施設において陸地処分を行っているほか,DOE関係施設からのものは,主に連邦政府運営の処分施設において陸地処分を行っている。
 また,1982年放射性廃棄物政策法が成立し,米国における高レベル放射性廃棄物対策の基本枠組が示された。

ロ) フランス
 高レベル廃液は,ガラス固化し,貯蔵した後,地層処分する計画であり,ガラス固化法としては,AVM(AtelierVitrificationdeMarcoule)法が実用段階である。また,1986〜7年頃の運開を目途に,実用規模の固化プラントがラ・アーグに建設中である。
 低レベル放射性廃棄物は,ラ・マンシュ貯蔵センターで最終貯蔵を実施している。

ハ) 英国
 高レベル廃液は,ガラス固化し,貯蔵した後,処分する計画であり,ガラス固化法として,AVM法を採用することを決定している。
 低レベル放射性廃棄物は,サイト内貯蔵,陸地処分を行っている他,海洋処分の実績も有している。
 また,昭和57年7月,Nirex(NuclearIndustryRadioactiveWaste- Executive)と呼ばれる放射性廃棄物の処理処分を実施する新たな機関を設立した。

ニ) 西独
 高レベル廃液は,ガラス固化し,貯蔵した後,岩塩層に地層処分する計画である。ガラス固化法としては,AVM法の他パメラ法*(Pilotan-lageMolzurHerstellungendlagerfahigerProducte)がベルギーと共同で開発されている。
 低レベル放射性廃棄物は,昭和42年から昭和53年までAsseII(岩塩坑)で陸地処分を実施したが,現在は許可手続きの関係で中断している。

ホ) オーストラリア
 高レベル廃液の処理方法として,合成岩石中に放射性核種をとじ込めるシンロック固化法について研究開発を行つている。昭和59年5月には我が国との研究協力に関する口上書を交換しており,ルーカスハイツ研究所と日本原子力研究所を中心とした研究協力が開始された。


*AVM法:フランスが開発したガラス固化法で,高レべル廃液をロータリーキルンで仮焼し,ガラス粉末を加えて溶解炉で溶かした後,キャスターに封入する方式である。
**Nirex:原子力産業放射性廃棄物執行部。
英国原子力公社(UKAEA),英国核燃料公社(BNFL)及び電気事業当局(CEGB,SSEB)により,それらの代理機関として設立され,低・中レベル廃棄物の処理処分を実施する。
***パメラ法:高レベル廃液を脱硝,濃縮し,ガラス粉末を加えて溶解炉で溶かし固化する方法で,固化の方式としては,ガラスをキャスターに封入する方式と,ビーズ状のガラス固体ととし金属に埋め込んでキャスターに封入する方式があり,現在,研究開発中である。


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