第2章 核燃料サイクル
6.放射性廃棄物の処理処分対策

(2)放射性廃棄物処理処分の研究開発

イ) 低レベル放射性廃棄物処理処分
 低レベル放射性廃棄物の海洋処分については,昭和59年度も前年度に引き続き,関係省庁,(財)原子力環境整備センター等において,試験的海洋処分の実施に関し所要の調査研究が進められた。一方,陸地処分については,日本原子力研究所による放射性同位元素を用いた放射性核種の地中挙動に関する試験,(財)原子力環境整備センターによるモニタリング手法開発のための調査研究等が行われている。

ロ) 高レベル放射性廃棄物処理処分
(i)固化処理技術開発
 固化処理については,昭和59年8月の放射性廃棄物対策専門部会中間報告の方針に示されるように,世界的に主流となっているホウケイ酸ガラスによる固化処理技術に最重点をおいて研究開発が進められている。動力炉・核燃料開発事業団においては,昭和65年度の運転開始を目標に,固化プラントを建設し,固化処理技術の実証を行うとともに,この建設計画と整合性をとって貯蔵プラントの建設を行うこととしている。固化処理技術の開発を進めるにあたっては,実験室規模の試験と実規模の試験,コールド試験とホット試験を組み合わせて行っており,動力炉・核燃料開発事業団においては,昭和53年度からの模擬廃液を用いた実規模でのガラス固化処理の試験,昭和57年度からの高レベル放射性物質研究施設(CPF)における,実廃液を用いた実験室規模でのガラス固化処理の試験の成果を踏まえ,現在固化プラントの設計を行っている。
 なお,無機材質研究所においては無機材質の高レベル放射性廃棄物処理処分への利用に関する基礎的研究を,また,大阪工業技術試験所においてはガラス固化処理に関する基礎的研究を進めている。
(ii)地層処分研究開発
 地層処分に関しては,地層という天然バリア(障壁)に固化体,キャニスター等の人工バリアを組み合わせることによって高レベル放射性廃棄物を人間環境から隔離することを基本的考え方とし,2000年頃を目途に処分技術の早期実証を行うことを目標に研究開発を進めている。このため,動力炉・核燃料開発事業団においては,我が国における地層の賦存状態の調査を文献調査及び地質概査により行うとともに,処分に適する地層を選定するための手法を開発するため,昭和56年度から宮城県細倉鉱山において岩石の透水性や熱的特性の試験等を継続しているほか,スウェーデンのストリパ鉱山における経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)の国際共同研究計画に参加し,岩石の基礎的な特性や試験方法について試験研究を行っている。
 これらの成果から,我が国においても天然バリアと人工バリアを適切に組みあわせることにより,地層処分は十分可能であるとの見通しが得られており,今後10年間程度をかけて,全国的視野に立って処分予定地の選定作業を進めていくこととしている。以上の技術開発と並行して,日本原子力研究所においては,処理処分の各段階の安全評価手法の整備を図るため,ガラス固化体の特性,処分条件下での放射性物質の挙動等の基礎的な試験研究を行っており,昭和57年度からは廃棄物安全試験施設(WAST EF)において放射性物質を用いた試験を進めているほか,シンロック等ガラス固化以外の新固化技術,群分離消滅処理,海洋底下処分等に関する基礎的研究を進めている。また,地質調査所においては,地層処分の岩体に与える影響等について,専門的知見に基づき,基礎的研究を進めている。

ハ) TRU廃棄物処理処分
 再処理工場の運転およびプルトニウム燃料の製造等に伴って発生するTRU(Trans-Uranium:超ウラン)廃棄物は,放射能レベルは低く,発熱量も少ないものの,長半減期のアルファ崩壊放射性核種を含むものであり,また,放射性廃棄物の性状も多様で種類も多く,また高レベル放射性廃棄物に対し発生量が多いという特徴を有している。このため,前記中間報告の方針に示されるように,その低減化を図るためベータ・ガンマ廃棄物との区分管理技術,減容・除染技術の開発を行うとともに,安定な形態への固化技術及び高レベル放射性廃棄物処分の研究開発を参考とした処分技術の開発を,動力炉・核燃料開発事業団,日本原子力研究所等で行っている。


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