第1章 原子力発電
3.原子力発電所の立地関連状況

(2)原子力発電所の立地をとりまく状況

 近年の原子力発電所の立地の進展状況をみると,昭和59年度において,東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所3号機・4号機及び関西電力(株)大飯発電所3号機・4号機が電源開発基本計画に組み込まれたものの,全体的に,電源開発計画への組み入れは,電力施設計画の予定に比べて遅れぎみであり,また,電源開発基本計画に組み込まれた後も着工が予定に比べて遅れぎみである。
 昭和60年3月には,全国一の原子力による電力供給地である福島県は,同県においてこれまで実施してきた安全確保対策等を「原子力行政の現状」としてまとめた。また,同年6月には,三重県は,県民の原子力発電に対する認識,理解を深めるための参考資料として,原子力発電所が運転開始されている所在16市町村を対象に電源立地が所在市町村の社会経済等にどのように影響を与えているかについて調査した結果を「原子力発電所先行地事例調査報告書」としてまとめた。このように地方自治体においても原子力に関する取り組み等が報告書として取りまとめられている。
 なお,昭和48年以来,軽水型原子炉の設置許可処分等に関し,3件の行政訴訟が係争中,2件の行政訴訟を求める訴えが裁判所に提出されており,また,5件の設置許可処分等に対して合計9件の異議申立てが行われている。
 このうち,福島第二原子力発電所原子炉設置許可処分取消訴訟については,昭和59年7月に福島地方裁判所において第一審判決が言い渡され,判決は原告の請求を棄却,伊方発電所1号原子炉設置許可処分取消訴訟については,同年12月高松高等裁判所において控訴審判決が言い渡され,判決は原告の控訴を棄却,また,東海第二発電所原子炉設置許可処分取消訴訟については,昭和60年6月水戸地方裁判所において第一審判決が言い渡され,判決は原告の請求を棄却している。これらの判決理由としては,いずれも設置許可処分における判断には合理的根拠があり,手続的な違法性もない等を挙げ,昭和53年5月の伊方発電所原子炉設置許可処分取消請求に係る第一審判決と同じく,原子力発電の安全性に関する国の主張を認めるものとなっている。
 なお,昭和60年9月,動力炉・核燃料開発事業団の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」に関し,原子炉設置許可処分の無効確認請求訴訟(行政訴訟)及び原子炉建設・運転の差止め請求訴訟(民事訴訟)が福井地方裁判所に提起された。


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