第1章 平和利用と国際関係

(5)インドの核実験と核不拡散強化

 昭和49年5月NPT非加盟国であったインドが「平和利用目的の核実験」を実施した旨発表した。
 当時,西ドイツやカナダが原子力資材供給国として力をつけている一方,NPT非加盟の発展途上国等において石油危機を契機として原子力発電の導入の気運が高まる状況にあった。こうした状況下においてインドが核実験を行ったため核拡散に対する国際的な懸念が急速に高まった。
 カナダはインドの実験発表後直ちにインドへの原子力の技術援助を停止する旨発表し,同年9月には,新輸出規制策を制定し,翌昭和50年1月には原子力機器および特殊核物質の対インド輸出禁止を発表した。米国も昭和50年8月に24品目に関する輸出規制を開始した。さらに米国は,昭和51年10月にフォード声明,昭和52年4月にカーター声明を発表してプルトニウム利用を抑制する考え方を明らかにするとともに,これを実現する手段として核不拡散法(昭和53年3月可決)を制定した。オーストラリアも,昭和52年5月同国の規制強化を図る新核不拡散政策を発表した。
 このような輸出国の規制強化の動きは,一方では国際的な輸出規制の動き(ロンドン協議,昭和53年1月ガイドライン発表)と,他方では,二国間協定改定(昭和55年日加協定改定,昭和57年新日豪協定締結)の動きを生み出した。また,これらと並行して原子力平和利用と核不拡散との両立の方途を検討するための国際的な検討の動き(昭和52年〜55年,INFCE)も見られた。さらには,核物質防護(脚注)についてもその重要性に対する認識が深まり,昭和54年核物質防護条約が採択された(我が国は未署名)。


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