第I部 「総論」
第2章我が国の原子力開発利用の現状33

5.国際関係

(1)国際協力等

イ)先進国との国際協力
 先進諸国においては,厳しい財政事情の下でプロジェクトの大規模化に伴う必要資金の確保,研究開発の効率性の追求等の見地から,昭和59年,当時の米国エネルギー省ホーデル長官の提唱に見られるように,エネルギー研究開発の国際協力を積極的に推進しようとの動きがある。
 我が国においても原子力分野において二国間,多国間あるいは国際機関の場を通じ活発に国際協力が行われており,昭和60年に入ってからは新たに以下の国際協力に関する取り決めが締結された。
 まず,1月には動力炉・核燃料開発事業団と米国エネルギー省(DOE)との間で「高速増殖炉のデータベース整備のための共同研究に関する取決め」が締結された。また,軽水炉の安全研究に係わるROSA-IV計画についても,昭和58年の米国に続いて昭和60年4月,日本原子力研究所とフランス原子力庁(CEA)とこ間で「ROSA-IV/BETHSY-CATHARE計画に関する研究協力取決め」が締結された。さらに昭和60年7月には日本,米国,欧州共同体(EC)においてトカマク型核融合装置について情報交換,人材交流等の国際協力を進もるための「三大トカマク協力取決め」を締結することが国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会で合意された。また,昭和60年9月には日本原子力研究所とオーストラリア原子力委員会及び米国エネルギー省との間でそれぞれ「高レベル廃棄物の管理技術の研究開発取決め」,「高温ガス炉研究開発協力取決め」が締結された。
 なお,高速増殖炉開発懇談会は昭和59年10月の中間とりまとめにおいて,高速増殖炉の国際協力はテーマによって二国間もしくは多国間にて進める必要があるが,国情の違いもあることから共同建設などへの参加は時期尚早であるとの考え方を示した。

ロ)開発途上国との協力
 近年,近隣アジア諸国を中心に開発途上国の原子力分野における我が国の協力に対する期待が高まっている。このような状況に鑑み,原子力委員会は開発途上国との協力促進に資するため,昭和58年8月,開発途上国協力問題懇談会を設置し,協力の進め方,協力の円滑化のための方策等について調査審議を進めた。これらの調査審議を踏まえ,昭和59年12月,原子力委員会は開発途上国協力は原子力先進国となった我が国の国際的責務であり,世界の核不拡散体制の確立に貢献していくという我が国の基本的考えに従って,今後積極的に協力を推進すべきであること,特に,開発途上国のニーズに応じ,技術協力の一層の促進に加え人材交流を中心とした研究交流が重要であること等を内容とした「原子力分野における開発途上国協力の推進について」を決定した。開発途上国協力について我が国は,従来からIAEAの「原子力科学技術に関する研究,開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)」に基づく協力,国際協力事業団(JICA)による政府ベース技術協力等を通じて,研修員の受け入れ,専門家の派遣等の協力を積極的に行ってきたが,更に,上記原子力委員会の方針に従い開発途上国との研究交流制度が整備されつつある。また,科学技術庁は,予算措置を講じ,昭和60年度には開発途上国より27名を招へいし,我が国において研究交流を行う予定である。また昭和59年7月に行われた第6回日韓科学技術大臣会議の意見の一致を受け,昭和60年7月韓国との間で日本原子力研究所と韓国エネルギー研究所の研究協力に関する政府間口上書の交換が行われ,これにもとづき8月には日本原子力研究所と韓国エネルギー研究所との間で「原子力安全性及びその関連分野における協力研究計画の実施に係る取決め」が締結された。

ハ)日中原子力協力協定の締結
 隣国である中国は,原子力力電所の建設を諸外国の協力を得つつ進めていく計画であり,昭和59年1月にはIAEAに加盟し,その後,英国,西独,米国等7ヵ国との原子力協力協定に署名した。我が国は昭和58年9月の第3回日中閣僚会議を契機として,原子力協力協定を締結すべく協議を行い,以後6回の協議を経て,双方の合意が得られ,昭和60年7月31日,第4回日中閣僚会議において協定が署名された。

 本協定においては,原子力の国際協力においても平和利用を確保するとの我が国の原則が貫かれ,IAEAの保障措置の自主的な受け入れ等の具体的な措置が盛り込まるなど,平和利用の担保が図られた。
 なお,日中間では,原子力協力協定の締結をまたずとも,可能な協力は行っていくことで意見の一致を見ており,第4回日中閣僚会議においては,ウラン共同探鉱,原子力安全研究等4分野において今後協力を一層拡大していくことで意見の一致をみた。

(2)核不拡散

イ)日米原子力協議
 昭和57年6月に日米双方は再処理問題について包括同意方式による解決を早期に図るため直ちに話し合いに入ることで意見の一致をみた。昭和57年10月以降これまで12回にわたって協議を実施してきたが,第11回協議(昭和60年5月)及び第12回協議(昭和60年7月)において政府は,米国側提案の包括同意方式における不明確な点について米国側見解を質すとの方針で協議に臨んだ。現在,これらの協議において明らかにされた米国側見解をもとに今後の方向について検討が行われているところである。
 なお,東海再処理工場における米国産使用済燃料の再処理については,昭和59年末までで期限がきれる昭和56年10月未の共同決定を昭和60年末まで延長することとなり,その旨の口上書の交換を昭和59年10月に行うとともに,現在,さらに,昭和61年末まで延長すべく両国政府内で手続中である。

ロ)多国間協議

 昭和52年から55年にかけて実施された国際核燃料サイクル評価(INFCE)における検討結果を踏まえ,保障措置の改良や核不拡散に関する新しい国際制度等について,IAEAの場を中心として,検討・協議が引き続き行われている。また,核物質防護については,核不拡散上重要な課題の一つであることが認識されてきており,昭和55年3月,核物質防護条約が署名のための検討を進めているところでもある。
 なお,「核兵器の不拡散に関する条約」(NPT)については,5年毎に必要に応じて条約の運用を検討するための再検討会議が開催されることが規定されており,この規定にもとづき,昭和50年及び昭和55年に第1回及び第2回の再検討会議が開催され,昭和60年には8月から約4週間にわたり第3回NPT再検討会議においては,NPTを引き続き支持する趣旨の「最終宣言」が採択された。


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