第I部 「総論」
第2章我が国の原子力開発利用の現状33

3.新型動力炉及びプルトニウム利用の動向

(1)高速増殖炉
 動力炉・核燃料開発事業団においては,実験炉「常陽」の建設・運転により技術経験の蓄積がなされてきており,その蓄積等を踏まえ現在,原型炉「もんじゅ」(電気出力28万キロワット)の建設工事が進められている。
 また,関連する研究開発については,動力炉・核燃料開発事業団において,機器製作,安全性等に係る研究開発及び大型炉に係る基礎的,研究開発等が行われており,また,民間においては,(財)電力中央研究所を中心に,所要の研究が行われている。
 実証炉の開発については,原子力委員会は,高速増殖炉開発懇談会を設け,調査審議を行っているところであり,昭和59年10月にはその中間とりまとめが行われた。

 その概要は以下のようなものである。
(i) 開発体制については,動力炉・核燃料開発事業団と電気事業者の円滑かつ密接な調整連携のもとに,協力しつつ推進する。
(ii) 開発スケジュールについては,1990年代初めの着工を目途に,当面3年間実証炉の基本仕様選定のための概念設計,研究開発等を実施する。
(iii) 燃料サイクルについては,動力炉・核燃料開発事業団を中心とし炉側との整合性をもって開発を進める。
 一方,国際協力については,従来から動力炉・核燃料開発事業団が中心となって進めてきている。最近,電気事業者あるいはメーカーにおいても国際協力の動きが活発化している。

(2)新型転換炉及びプルトニウム利用

 これまで新型転換炉(ATR)の開発は,動力炉・核燃料開発事業団において進められてきており,昭和54年3月に運転を開始した原型炉「ふげん」(電気出力16万5千キロワット)が順調に運転されている。
 実証炉については,電源開発(株)は,青森県下北郡大間町に実証炉の建設を進めるべく,環境調査結果のとりまとめ,動力炉・核燃料開発事業団の合理化設計をもとに,同事業団の支援の下に基本設計を実施してきた。これらの進展等を踏まえ,昭和60年5月ATR実証炉建設推進委員会(電源開発(株),動力炉・核燃料開発事業団,電気事業連合会,科学技術庁,通商産業省で構成)において,実証炉建設計画が了承され,さらに,6月には,電源開発(株)は,青森県及び地元町村に対して建設計画への協力要請を行った。

 一方,軽水炉によるプルトニウム利用は,電気事業者を中心として進められてきており,原子力発電所において,プルトニウム―ウラン混合酸化物(MOX)燃料の少数集合体規模での照射計画の準備が進められているところである。また,引き続いて実用規模(1/3〜1/6炉心程度)での実証計画も検討されている。

(3)MOX燃料加工及び高速炉燃料の再処理
 MOX燃料加工及び高速炉燃料の再処理については動力炉・核燃料開発事業団において研究開発が進められている。
 MOX燃料加工については,現在,新型転換炉原型炉「ふげん」用及び高速実験炉「常陽」用燃料加工施設が稼動しており,その経験を踏まえ,高速増殖原型炉「もんじゅ」用(5トンMOX/年)の燃料加工施設の建設が進められており,また,新型転換炉実証炉用(40トンMOX/年)の燃料加工施設が進められている。
 また,高速増殖炉の使用済燃料については,プルトニウム含有量が多いこと及び熱中性子炉の場合よりも燃焼度が高くなること等から,基本的には従来の再処理技術をベースとしつつ高速増殖炉使用済燃料に対応した再処理技術を確立するため,現在,東海再処理工場の経験を踏まえて研究関発が進められている。昭和59年9月には高レベル放射性物質研究施設(CPF)で「常陽」の照射済燃料から回収された初めてのプルトニウムが再び「常陽」に装荷され,実験規模ではあるが,初めて高速増殖炉の核燃料サイクルが完結する等順調な進展をみせている。


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