各論
第10章 核不拡散

3 保障措置

(1)我が国における保障措置体制
 我が国は,従来より原子力基本法の下に原子力開発利用を平和目的に限って推進しており,NPTに基づき,昭和52年3月,IAEAとの間に,保障措置協定を締結し,国内の保障措置制度を基本とした国内全ての原子力活動に対するIAEAの保障措置を受け入れている。
 我が国における保障措置体制を図示する。
 一方,核燃料サイクルの拡充,とりわけプルトニウム利用の拡大,INFCE後の保障措置強化の国際動向に対応し,保障措置体制の充実,保障措置技術開発等保障措置の改善が図られてきている。
 とりわけ保障措置の改善についての基本的な方針として次の3点が原子力開発利用長期計画に盛り込まれている。
 イ)核燃料サイクル全般にわたる核物質の流れの連続的追跡による査察量の低減化・効率化
 ロ)工程管理,品質管理等から得られたデータの保障措置,計量管理への有効利用等保障措置の合理化
 ハ)施設設計の段階からの費用対効果の面も含めた有効な保障措置の適用性の考慮
 現在,上記基本方針に従って,将来操業を開始する主要原子力施設に対し,効率的・効果的保障措置の適用を可能とする計量管理に関する技術指針の検討を開始している。

(2)保障措置の実施状況
 保障措置は主に核物質の計量管理,封じ込め・監視及び査察から成り立っている。その仕組みを図に示す。
 これに基づき昭和58年度に実施された保障措置活動は下記のとおりである。

イ)計量管理報告及び情報処理
 原子力施設設置者は,原子炉等規制法に基づき,国に在庫変動報告,物質収支報告及び実在庫量明細表を提出することが義務づけられている。昭和58年の報告件数及びそれらに含まれるデータの処理件数は,表のとおりである。

 また,我が国における昭和58年の核物質の流れは次の図のとおりである。
 一方,指定情報処理機関である(財)核物質管理センターの情報処理システムに対し,情報量の増加に対処するため,データベース管理システムが導入された。

ロ)査察
 我が国の原子力施設に対しては,政府による国内査察を基本とし,さらにIAEAによる国際査察が実施されている。昭和58年の保障措置対象施設及び国内査察実績は表のとおりである。なお,昭和58年に我が国及びIAEAが我が国の原子力施設に対して実施した保障措置の結果,核物質の転用の可能性は皆無であったとの結論が得られている。

ハ)保障措置分析
 昭和58年度においては,(財)核物質管理センター保障措置分析所においてウラン関係試料約395個,プルトニウム関係試料約114個の分析を行った。また,査察時にも非破壊測定を行った。これに加えて,合理化のため,プルトニウムの自動分析装置の開発を行った。

(3)保障措置技術に関する研究開発と国際協力
 日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団,(財)核物質管理センター等において,保障措置の適用をより効果的・効率的なものとするための研究開発を進めている。

 昭和59年度の我が国における保障措置技術開発項目は,表のとおりであり,今後の大型原子力施設に対する保障措置適用のための研究開発,再処理施設等のプルトニウム取扱施設及びウラン濃縮施設に対する保障措置適用のための研究開発等に重点を置いている。
 国際的には,IAEAの保障措置技術開発を我が国として支援するため,「対IAEA保障措置支援計画(JASPAS)」を,米国,英国,西独,豪州,カナダに次ぎ,昭和56年11月に発足させた。
 現在,JASPASの下で行われているプロジェクトは表のとおりである。
 また,日独科学技術協力協定の下に設置された保障措置パネル会合が昭和59年3月に東京で開催され,再処理施設に対する保障措置問題等について意見交換が行われた。


目次へ          第10章 第4節へ