各論
第6章 核融合,原子力船及び多目的高温ガス炉の研究開発

3 多目的高温ガス炉

 エネルギーを大量かつ安定的に供給することが可能な原子力を我が国のエネルギー消費全体の約70%を占める非電力分野においても有効に利用していくことは,エネルギーの安定供給の確保等を図る上で極めて重要であり,1,000°C程度の高温ガスが得られ,幅広い用途が期待される多目的高温ガス炉の研究開発を積極的に推進する必要がある。
 原子力開発利用長期計画においては,原子炉出口温度950°C程度を目標とする実験炉を1990年頃の運転開始を目途に建設することとされており,昭和55年度から詳細設計を行う等日本原子力研究所において研究開発を進めている。

(1)研究開発
 昭和55年度から開始された実験炉の詳細設計(I)の成果をもとに,昭和58年度より詳細設計(II)を開始した。詳細設計(II)においては,実験炉の早期建設に備え,その第1段階として,原子炉出口冷却材温度等の設計基本条件の見直しを行い,新しい設計基本条件に基づいてプラント全体計画,機器設計条件等の検討を進めてきた。昭和59年度においては,詳細設計(II)の結果をもとに,システム全体を合理化するためのシステム調整を行うこととしている。
 また,実験炉に組み込まれる主要機器・部品の機能及び健全性を実証するための大型構造機器実証試験ループ(HENDEL:Helium Engineering Demonstration Loop)のうち本体部(高温ガス供給部),本体部と試験部をつなぐアダプタセクション,燃料体スタック実証試験部(T1)による実験を行うとともに,炉内構造物実証試験部(T2)の試験体及び試験装置の設計・製作を進めている。半均質臨界実験装置(SHE)については,実験炉炉心の核的安全性を実証するため昭和59年度中に改造を終え(高温ガス炉臨界実験装置(VHTRC)と名称を変更),昭和60年度の臨界実験開始に向けて準備が進められている。耐熱材料,黒鉛材料,燃料,高温熱工学及び高温構造等に関する研究も引き続き進められている。また,核熱の利用については,実験炉に接続する利用系プラントについての技術的課題等の検討を行うとともに水素製造に関する基礎的研究を進めている。

(2)国際協力
 日米間の協力については,原子力安全性研究協力取決めに基づき,高温ガス炉情報交換会議がこれまで3回開催された。また,昭和55年6月,日本原子力研究所とGAT社(General Atomic Technology Inc.)との間で,高温ガス炉関係の情報交換に関する覚書が交換され,昭和57年6月及び59年6月に,それぞれ2カ年間延長された。また,協力の拡大の可能性について,58年7月ワシントンにおいて第1回目の日米間の協議が行われ,さらに,59年7月には東京において第2回目の協議が行われ,日米間で協力可能な分野に関する情報交換,今後の協力の形態等について話し合いがなされた。
 日独間の協力については,日独科学技術協力協定に基づき,これまで3回「高温ガス炉に関するパネル」が開催された。
 また,日本原子力研究所は,昭和54年2月以来,ユーリッヒ研究所との間で研究協力を行うとともに,59年1月,GHT社/IA社との間で,KVK(大型高温機器試験ループ)-HENDEL情報交換協力取決めを締結した。


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