各論
第5章 新型動力炉の開発及びプルトニウム利用

1 高速増殖炉

 高速増殖炉は,発電しながら消費した以上の核燃料を生成する画期的なものであり,ウラン資源を最大限に利用し得るものであるので,核燃料の資源問題を基本的に解決でき,将来の原子力発電の主流となるものと考えられている。
 我が国においては,動力炉・核燃料開発事業団が中心となって2010年頃の高速増殖炉の実用化を目指し,研究開発を行っている。
 実験炉「常陽」については,その建設・運転を通じ技術的経験を蓄積してきたところであり,昭和58年8月以降は燃料・材料の照射用施設として利用されている。
 また,実験炉に続く原型炉「もんじゅ」(電気出力28万キロワット)については,昭和58年5月には原子炉の設置が許可され,昭和65年度の臨界を目標としてその建設準備工事が進められている。さらに,実証炉については,現在,原子力委員会の高速増殖炉開発懇談会において検討が進められている。

(1)実験炉の運転
 実験炉「常陽」は,昭和52年4月の初臨界以来順調な運転を続け,原型炉の開発に必要な技術データや運転経験を着実に蓄積してきた。
 昭和55年1月から昭和56年12月まで増殖炉心(熱出力7万5千キロワット)での運転が行われた。引き続いて,照射炉心(熱出力10万キロワット)への改造が行われ,現在,順調に運転が行われている。

 なお,昭和59年9月には,「常陽」の使用済燃料から回収されたプルトニウムが再び「常陽」に装荷され,初めて高速増殖炉でのリサイクル利用がなされた。

(2)原型炉の建設
 原型炉「もんじゅ」は,その設計・建設・運転の経験を通じて,発電プラントとしての高速増殖炉の性能,信頼性を技術的に確認することを目的としている。
 同炉は,昭和58年5月に内閣総理大臣より原子炉設置許可を得ており,現在,昭和65年度の臨界を目指して,昭和58年1月以来,建設準備工事が進められている。
 「常陽」と「もんじゅ」の主要な設計仕様を表に示す。

(3)実証炉の開発
 原型炉に続く実証炉の開発については,動力炉・核燃料開発事業団において昭和50年より,また,電気事業者において昭和53年より概念設計が実施されてきた他,(財)電力中央研究所においても概念の確立に必要な研究が進められている。また,・現在,原子力委員会に高速増殖炉開発懇談会が設けられ,実証炉の研究開発及び設計の進め方,国際協力のあり方等について,調査・審議が進められている。

 なお,総合エネルギー調査会原子力部会において,高速増殖炉の開発スケジュール,経済性の目標等について,昭和58年11月,報告書が取りまとめられた。

(4)研究開発の現状
 高速増殖炉の研究開発は,動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターのナトリウム機器・材料開発施設,安全性試験施設及び照射後試験施設等の各施設を中心として実施されているほか,日米,日英,日独仏の協力が,動力炉・核燃料開発事業団を当事者として行われている。


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