各論
第3章 核燃料サイクル

4 使用済燃料の再処理

 再処理については,現在,東海再処理工場における再処理並びに英国核燃料公社(BNFL)及びフランス核燃料公社(COGEMA)との再処理委託契約により対処しており,これらにより,昭和70年頃までの使用済燃料発生量に対処することができる見通しである。なお,各発電所及び東海再処理工場の貯蔵プールには,昭和59年3月現在,合計約1,200トンの使用済燃料が安全に保管されている。

(1)東海再処理工場
 東海再処理工場は我が国初の再処理工場であり,動力炉・核燃料開発事業団により東海村に建設されたものである。同工場は昭和56年1月から本格運転に入り,試験運転期間を含め昭和52年9月から昭和59年3月までに累計約174トンの使用済燃料を処理している。
 同工場は,昭和57年4月には,2基ある溶解槽のうち1基に,さらに昭和58年2月には,残りの溶解槽及び酸回収蒸発缶にそれぞれピンホールが発生したため,操業を停止し,ピンホールが発生した溶解槽2基に対し,遠隔操作による補修作業を行うとともに,国産の酸回収蒸発缶及び新型溶解槽の製作を行ってきた。昭和58年10月には国産の酸回収蒸発缶を設置し,同年12月には,補修を行った2基の溶解槽の試験運転を実施した。さらに,現在,昭和60年初めの運転開始を目標に新型溶解槽の設置等を行っているところである。
 同工場は,フランスのサンゴバン社の設計によるものであるが,環境への放出放射能量を極力抑えるという我が国の方針に従って,中・低レベル廃液処理用蒸発缶での凝縮液を再度蒸発処理することによって放出量を低減させる施設(E施設,昭和50年7月完成)及び発生源において極低レベルとして区分していた廃液を蒸発処理する施設(Z施設,昭和54年1月完成)を我が国が独自に設計し,建設した。さらに,これらに加え,現在,せん断・溶解オフガス中のクリプトンを液化して回収する技術開発施設が完成し,試運転を行うほか,抽出工程から発生する廃溶媒のより効果的な処理技術を開発するための廃溶媒処理技術開発施設を昭和59年4月完成させ,試運転を行っており,放出放射能の低減化に努めてきている。
 また,使用済燃料を再処理して得られた回収ウラン約100kgを新型転換炉原型炉「ふげん」用のMOX燃料に初めて使用し,昭和59年4月,燃料体4体を製造し,6月「ふげん」に装荷した。

(2)民間再処理工場
 昭和55年3月,電力業界を中心に,民間の再処理会社として設立された日本原燃サービス(株)は,立地選定のための調査等諸準備を進めてきたが,昭和59年7月には,電気事業連合会は,再処理施設の青森県六ヶ所村への立地について青森県及び同県六ヶ所村に対し申入れを行った。現在,日本原燃サービス(株)は設計等の準備を行っているところであるが,今後,立地調査にひきつづき,昭和61年頃から準備工事を開始し,昭和70年頃の操業開始を予定している。なお,使用済燃料及び返還廃棄物の貯蔵施設は,昭和66年頃から操業の予定である。

(3)海外再処理委託
 我が国の電力会社は,これまで英国核燃料公社(BNFL)及びフランス核燃料公社(COGEMA)と再処理委託契約を結んできている。
 具体的には,軽水炉については,日本原子力発電(株)-BNFL,東京電力(株)-BNFL,関西電力(株)-COGEMAの間で合計約1,400トンUの再処理委託契約が結ばれているほか,9電力会社及び日本原子力発電(株)がBNFLとCOGEMAとの間で合計約3,200トンUの契約を結んでいる。さらに,ガス炉については,日本原子力発電(株)はBNFLとの間で,これまで合計約1,100トンUの再処理委託契約を結んでいる。
 これらの契約に基づき,昭和58年度末までに,軽水炉使用済燃料約1,150トンU及びガス炉使用済燃料約800トンUが英国及びフランスに輸送されている。

(4)技術開発
 動力炉・核燃料開発事業団においては,前述のように各種施設を建設し,放出放射能の低減化のための技術開発を行う一方,再処理施設の大型化,運転の安定化等を目的として,遠隔補修技術及び供用期間中検査技術の開発,新型プロセス機器の開発,プロセス機器の技術開発,再処理工程管理システムの開発等再処理プロセスに関する技術開発及び保障措置技術の開発等を進めている。
 日本原子力研究所においては,再処理プロセスの改良のための基礎工学的研究,臨界,遮へい等に関する安全性評価手法の開発等の安全性研究,再処理基礎化学,材料技術,計測技術,遠隔操作技術等の基礎技術の研究及び保障措置技術の開発を行っている。
 また,再処理施設の大型化に対応するために必要となる環境安全に関する試験研究,再処理主要機器及びプロセス機器等の技術確証調査等が行われている。


目次へ          第3章 第5節へ