各論
第3章 核燃料サイクル

2 ウラン濃縮

(1)ウラン濃縮需給パランス
 現在,我が国の電気事業者は,米国及びフランスから濃縮役務の供給を受けている。米国については,米国エネルギー省(DOE)との長期契約により約6,000トンSWU/年の濃縮役務を確保している。また,フランスのユーロディフ社については,昭和49年に締結された契約に基づき,昭和55年から昭和64年までの10年間に,約1,000トンSWU/年の濃縮役務の供給を受けることになっている。
 これら既手当分により,昭和70年頃までの供給は確保されているが,それ以降の分については,今後,新規の手当が必要となる見通しである。この新規手当については,自主的核燃料サイクルの確立という観点から,その相当部分は,国産により賄っていくこととしている。
 なお,昭和59年1月,DOEより各社必要量の30%を上限としDOE以外からの濃縮ウランの混焼を認める等を内容とする新たな契約形態の提示があり,検討がなされた結果,電気事業者は,従来の長期契約をこの契約に切り替えることとしている。

(2)ウラン濃縮の技術開発
 国際的な原子力開発計画の遅れに伴って,世界の濃縮役務の需給バランスは,現在,緩和傾向にあり,米国エネルギー省と欧州の濃縮事業者は激しい価格競争を展開するとともに,低廉化を目指して,遠心分離法,レーザー法等多様な技術開発を進めている。
 このような国際動向のなかで,我が国がウラン濃縮の国産化の目標を達成し,国際競争力のある事業を確立していくためには,遠心分離機の高性能化,量産化,プラントシステムの合理化等を進める一方,次世代の技術と考えられるレーザー法等の新濃縮技術を積極的に開発していく必要がある。
 我が国においては,自主技術によるウラン濃縮工場を稼働させるべく,昭和48年度から国のプロジェクトとして動力炉・核燃料開発事業団を中心に遠心分離法によるウラン濃縮技術の開発が推進されてきている。同事業団は,岡山県人形峠において,昭和54年9月以来パイロットプラントの一部運転を続けてきたが,昭和57年3月末からは,遠心分離機合計約7,000台による全面運転を開始した。昭和58年度末までの濃縮ウラン生産量は約26トンUであり,その一部は新型転換炉「ふげん」に使用されている。また,東海再処理工場から得られた回収ウランの再濃縮試験が同事業団東海事業所で進められており,昭和58年度末までに約170kgUの濃縮ウランを生産している。
 同事業団は,引き続き遠心分離機の高性能化,信頼性向上,経済性向上,六フッ化ウランガス処理系の合理化試験等を重点として技術開発を行っているところである。特に,複合材料を用いた遠心分離機及びプラントシステムの開発についても,同事業団が技術開発を進めている。また,民間においてもウラン濃縮遠心分離機の量産体制の確立に向けて技術開発を行っている。
 一方,遠心分離法以外のウラン濃縮技術の研究開発については,民間企業において化学法ウラン濃縮技術の試験研究及びシステム開発調査が進められている。
 さらに,レーザー法については,従来,日本原子力研究所による原子法の研究及び理化学研究所による分子法の研究がそれぞれ進められてきたところである。現在,日本原子力研究所は,原子法の原理実証に成功し,工学基礎段階へ進んでおり,また,理化学研究所は,昭和59年3月,分子法のレーザー(ラマンレーザー)の開発に成功し,原理実証を進めようとしているところである。

(3)原型プラントの建設
 動力炉・核燃料開発事業団は,遠心分離機の量産技術の確立,プラント設備の合理化等により濃縮プラントの信頼性・経済性の向上を図るため,商業プラントに先立って原型プラントを建設・運転することとしており,昭和58年11月,同プラントを岡山県人形峠に建設することを決定した。昭和59年8月には環境審査が終了し,また,同年7月には加工事業の許可申請がなされ,現在,安全審査が行われている。昭和59年度には土地造成に着手し,昭和62年度に第一期分として100トンSWU/年の能力で部分運転を開始,昭和63年度には200トンSWU/年の能力で全面運転を開始する予定である。

(4)商業プラントの建設
 我が国の遠心分離法技術は,動力炉・核燃料開発事業団による技術開発及び運転経験の蓄積の結果,国際的な水準に達しており,商業プラントの建設に当たっては,これまでの知見を適切に活用しつつ推進していくことが必要である。
 昭和59年7月には,電気事業連合会が,青森県及び同県六ヶ所村に対し,ウラン濃縮施設の六ヶ所村への立地について申入れを行った。また,ウラン濃縮の事業化のため,電気事業者を中心に,商業プラントの事業主体の設立準備が進められている。
 今後,立地調査にひきつづき,昭和61年頃に準備工事開始,昭和66年頃に操業開始が予定されており,その後,逐次増設され,最終的には濃縮能力1,500トンSWU/年の規模とする計画となっている。


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