各論
第2章 原子力発電

4 軽水炉技術の定着化等

(1)軽水炉技術の現状
 軽水炉は,技術的にも経済的にも実証された炉型であり,現在,発電用原子炉として世界で最も広く利用されている。昭和59年6月末現在,軽水炉は世界で運転中の原子力発電所設備容量の約80%を占めており,我が国においても,現在営業運転中の商業用原子力発電設備は,1基を除いて全て軽水炉である。我が国における軽水炉技術は,当初は米国からの技術導入によっていたが,その後の導入技術の消化・吸収及び国内における技術開発と経験の蓄積により,我が国に十分定着するに至っている。

(2)軽水炉の改良標準化等
 軽水炉の改良標準化については,国,電気事業者及び原子力機器メーカーが一体となり,昭和50年度から昭和55年度にかけて第一次及び第二次改良標準化計画が進められ,信頼性及び稼働率の向上,定期検査の効率化,従業員の作業放射線量の低減等の成果が得られた。第一次計画の成果を採り入れた最初のプラントとして,昭和59年2月に東京電力(株)福島第二原子力発電所2号機(BWR)及び昭和59年9月に九州電力(株)川内原子力発電所1号機(PWR)が運開している。
 昭和56年度からは,これまで実施してきた第一次及び第二次改良標準化プラントをベースとして,機器・システムはもちろん炉心を含む原子炉本体を対象に,信頼性,稼働率,運転性及び立地効率の向上,従業員の作業放射線量の低減及び建設工期の短縮を図ることにより,日本型軽水炉を確立することを目標に,5ヵ年計画で第三次改良標準化計画が実施されている。

 なお,第三次改良標準化と関連して,従業員の作業放射線量の低減等に寄与するインターナルポンプ設備及び日間負荷追従運転を可能とする高性能燃料の実用化を推進するため,通商産業省は,昭和56年度から(財)原子力工学試験センターに委託して確証試験を実施している。
 また,総合エネルギー調査会原子力部会においては,今後,原子力発電がその規模を拡大し,電力供給の主力を担う時代を迎えるに当たり,それにふさわしい,より高度の信頼性及び経済性を備えた原子力発電体系を実現することを目指し,検討を行っており,昭和59年8月,総合エネルギー調査会原子力部会軽水炉技術高度化小委員会において中間報告がとりまとめられた。
 一方,原子力発電所の中長期的な立地選択の幅の拡大を図るため,通商産業省において,昭和52年度から新立地方式について調査・検討が進められている。


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