各論
第2章 原子力発電

2 原子力発電所の運転状況

(1)設備利用率
 商業用原子力発電所の運転は順調に行われ,設備利用率は,昭和55年度に60%を超した後も着実に上昇を続けてきており,昭和58年度には70%を超え71.5%に達した。これは毎年約4カ月にわたり定期検査を慎重に行っていることを考慮すると,ほぼフル稼働に近い状態であることを示しており,我が国は世界の主な軽水炉保有国の中でも極めて安定した運転実績を持っていると言えよう。
 このように,近年,設備利用率が着実に向上してきている要因としては,我が国で初めて商業用原子力発電所が運転開始されて20年近くになり,その間,我が国において,独自に軽水炉技術の開発・改良が重ねられ,その技術の定着化が着実に図られてきたこととあわせて,初期故障に係る原因について所要の改善措置が講ぜられ,運転停止に連なるトラブルが減少したこと,内外の事故例や運転経験等を踏まえトラブルの未然防止対策の徹底及びトラブル発生後の対応の迅速化,適確化が図られてきたこと,改修工事の減少及び定期検査の効率的実施が図られ定期検査期間が短縮したこと,さらには,連続運転期間が長期化するとともに一部のプラントで長期連続運転(13カ月までの連続運転が認められている)が達成されたこと等を挙げることができる。

(2)事故・故障等
 原子力発電所の事故・故障等は,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」とする)及び電気事業法に基づき,原子炉設置者が国に対して報告するよう義務づけられている。昭和58年度中に両法に基づき報告のあった原子力発電所の事故・故障等は27件であり,昭和59年度は8月末までで7件であった。なお,いずれの事故・故障等についても,放射線及び放射性物質による従業員及び原子力発電所の周辺公衆への影響はなかった。


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