昭和59年版
原 子 力 白 書 昭和59年10月
原子力委員会
昭和59年原子力年報の公表に当たって ここに,昭和59年原子力年報を公表します。
我が国の原子力研究開発利用は,昭和29年に初の原子力予算が成立して以来,厳に平和目的に限って進められ,本年で30年を経過しました。今や,原子力発電は総発電電力量の20%以上を供給し,運転状況も実質的にはフル稼働に近い極めて良好な実績を示しているほか,放射線の利用も医療,工業,農業等各般の分野で急速な進展をみせる等,原子力は国民生活や経済活動に不可欠なものとなっております。
原子力発電は,経済性,エネルギーの大量供給性等に優れているばかりでなく,自主的な核燃料サイクルの確立及びプルトニウムの利用等により国産エネルギーに準じた高い供給安定性を持ち得るという点に大きな特長を有しています。従って,今後とも引き続き,原子力発電の推進に積極的に取り組んでいくとともに,原子力発電が有するこの特長を最大限に活かすべく自主的な核燃料サイクルの早期確立,新型動力炉の開発等に努力を傾注していく所存であります。また,同時に経済性の一層の向上に格段の努力を払っていくことが肝要であります。
一方,国際的には,近時,開発途上国からの我が国の協力に対する期待がとみに高まっており,我が国としては,原子力研究開発利用の実績を生かすとともに,原子力基本法の精神にのっとり,従前からの先進国との協力に加え,これら開発途上国との協力に積極的に取り組んでいく所存であります。
発刊以来27回目を数える本年報では,原子力発電,核燃料サイクル及び原子力研究開発の進展状況,国際協力を中心とした国際問題,さらには,原子力産業について的確でわかり易い記述を心掛けました。
本年報が,我が国の原子力研究開発利用の現状について,広く国民各位の御理解を得るために役立つことができれば幸甚です。
昭和59年10月
国務大臣 原子力委員会委員長 岩動 道行
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