第8章 基礎研究等
1 基礎研究の動向

 原子力関係の基礎研究は,物理・化学分野,生物・医学分野,燃料・材料その他工学的分野に大きく分類できる。
 物理・化学分野は,炉物理,核物理,放射線化学等の研究分野があり,日本原子力研究所,理化学研究所等において研究が行われている。
 昭和30年代には,日本原子力研究所においてJRR-1からJRR-4までの研究炉が建設されるとともに,理化学研究所においてサイクロトロンの建設が進められるなど大型研究施設の整備が進み,以降それらを用い中性子線,重粒子線等による研究が進められた。昭和50年代に入ると,日本原子力研究所において20MeVタンデムバンデグラフ加速器,理化学研究所において重イオン線型加速器が建設され高エネルギー粒子線による研究が開始された。
 生物・医学分野は,生物学,基礎医学,臨床医学等の広い研究分野があり,放射線医学総合研究所を中心にトレーサーを利用した生体内の生理学的・生化学的研究,放射線障害のメカニズムを解明にするための研究,高LET放射線によるがん治療研究等が行われている。
 このうち,放射線障害のメカニズムの解明は,低レベル放射線の人体への影響等の基礎的知見を得るものとして不可欠であり,近年の原子力開発の進展に伴って重要性を増している。こうした情況を踏まえ,放射線医学総合研究所においては,昭和53年に晩発障害実験棟が完成し,晩発障害に関する研究が本格的に行われるようになり,さらに昭和54年度より内部被ばく実験棟の建設が進んでいる。
 一方,放射線を利用したがん治療については,ガンマ線,電子線等の従来の放射線より治療効果の高い高LET放射線を導入すべく,基礎的な生物研究から臨床研究までさまざまな段階で研究が行われている。特に,放射線医学総合研究所においては,昭和40年代後半にサイクロトロンが整備され,現在,速中性子線,陽子線を用いた治療研究が行われている。

 燃料・材料その他の工学的分野については,昭和30年代前半には,金属材料技術研究所を中心として材料試験,後半には日本原子力研究所の研究炉を用いた燃料・材料の照射試験が進められた。昭和40年代に入り日本原子力研究所の材料試験炉(JMTR)が建設されたことに伴い,同炉を用いた照射試験等を中心に研究が強力に進められてきている。


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