第7章 放射線利用
3 工業への利用

 放射性同位元素は,トレーサーとしてエンジン部や機械部品の摩耗測定に利用されており,放射線の測定の感度が高いため,迅速でしかも高信頼度の測定が可能となっている。
 また,石油工業においてトレーサー利用が最も多く,油田の開発から石油の精製,パイプライン輸送,タンク貯蔵にまで及んでいる。
 線源利用には,ゲージング,非破壊検査,放射線化学等があげられる。
 ゲージング利用は,物体の厚み,密度,液面の高さ等を測る手段として放射性同位元素を用いる方法であり,工程管理のための厚み計,密度計,液面計等,及び環境汚染物質分析のためのイオン分析計,ラジオクロマトグラフィー装置等として利用されている。
 非破壊検査法については,鉄鋼,機械,造船業,航空機製造業を中心に,60Co,192Ir等が放射線源として利用されており,非破壊検査専業会社の数においては,我が国は世界一を誇っている。
 放射線化学については,電子線加速器等を用いた高分子材料の改質及び加工が挙げられる。実用化されたプロセスとしては,電線被覆材の耐熱性,絶縁性等の向上,発泡ポリエチレンの加工,塗装塗膜の硬化等がある。


目次へ          第7章 第4節へ