第5章 新型動力炉の開発及びプルトニウム利用
2 高速増殖炉

 高速増殖炉は,発電しながら消費した以上の核燃料を生成する画期的なものであり,ウラン資源を最大限に利用し得るものであるので,核燃料の資源問題を基本的に解決でき,将来の原子力発電の主流となるものと考えられている。
 我が国においては,動力炉・核燃料開発事業団が中心となって2010年頃の高速増殖炉の実用化を目指し,研究開発を行っている。
 実験炉「常陽」については,その建設・運転を通じ技術的経験を蓄積してきたところであり,今後は燃料・材料の照射用施設として利用することとしており,昭和58年3月に照射炉心への移行作業が完了した。
 また,実験炉に続く原型炉「もんじゅ」については,昭和58年5月には原子炉の設置が許可され,昭和65年度の臨界を目標として,その建設準備工事が進められている。さらに,実証炉については,1990年代始め頃に着工することを目標としており,昭和57年6月の原子力開発利用長期計画に示された基本方針の具体化のため,昭和58年4月,原子力委員会に高速増殖炉開発懇談会が設けられた。
 現在,同懇談会において,
(i)実証炉の研究開発及び設計の進め方(燃料製造及び再処理に関する研究開発を含む)
(ii)国際協力のあり方
(iii)その他実証炉開発に関する重要事項
 について審議を進めているところである。

 なお,通商産業省では,高速増殖炉の開発スケジュール,経済性の目標等について検討し,昭和58年4月に取りまとめが行われた。

(1)実験炉の運転
 実験炉「常陽」は,昭和52年4月の初臨界以来順調な運転を続け,原型炉の開発に必要な技術データや運転経験を着実に蓄積してきた。
 昭和55年1月からは,増殖炉心での最高熱出力7.5万キロワット運転を開始し,昭和56年12月,所期の目的を達成して,増殖炉心での運転は終了した。
 引き続いて,昭和57年1月からは,照射炉心への改造が行われ,昭和57年11月には臨界に達し,昭和58年3月には熱出力10万キロワットを達成し,照射炉心への移行を完了し,同年8月からサイクル運転を開始した。

(2)原型炉の建設
 原型炉「もんじゅ」は,その設計・建設・運転の経験を通じて,発電プラントとしての高速増殖炉の性能,信頼性を技術的に確認することを目的としている。

 「もんじゅ」については,昭和53年8月から国による環境審査が,昭和54年2月から福井県による自然公園法に係る審査が開始され,昭和57年5月に至り地元福井県知事の建設同意が得られた。これに伴い,「もんじゅ」の立地地点を福井県敦賀市白木地区とすることを含む建設推進についての閣議了解がなされ,上記環境審査も昭和57年6月に終了した。

 また,原子炉の設置に係る安全審査が昭和55年12月から開始され,昭和57年5月には行政庁による安全審査が終了し,引き続き原子力安全委員会による安全審査が昭和58年4月まで行われ,同年5月に内閣総理大臣より原子炉設置許可を得た。この間,昭和57年7月には第2次公開ヒアリングが敦賀市において開催されている。
 現在,「もんじゅ」については昭和65年度の臨界を目指して,その建設準備工事が進められている。
 建設準備工事は,昭和58年1月に着手されたものであるが,今後は,これを進めていくとともに,早期に本体工事に着手することとしている。
 「常陽」と「もんじゅ」の主要な設計仕様を表に示す。

(3)研究開発の現状
 高速増殖炉の研究開発は,動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターのナトリウム機器・材料開発施設,安全性試験施設及び照射後試験施設等の各施設を中心として実施されているほか,日米,日英,日独仏の協力が,動力炉・核燃料開発事業団を当事者として行われている。
 実証炉に関しては,概念設計が動力炉・核燃料開発事業団及び電気事業者により実施されているほか,(財)電力中央研究所においても概念の確立に必要な研究を進めている。


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