第5章 新型動力炉の開発及びプルトニウム利用
1 新型転換炉

 新型転換炉は,我が国がプルトニウムの早期利用を目指して開発を進めている自主開発炉であり,原型炉「ふげん」(電気出力:16万5千キロワット)の設計・建設・運転により実用化に向けての技術的見通しが得られてきている。原子力委員会は,昭和57年8月,新型転換炉の実証炉計画推進のための基本方針を決定しており,現在,その方針に沿って,関係者により実証炉建設に向けて諸準備が行われている。
 新型転換炉の開発経緯および今後のスケジュールを次表に示す。

(1)原型炉の運転状況
 原型炉「ふげん」は,昭和54年3月から本格運転を開始し,概ね順調に運転されている。運転状況を次表に示す。

 なお,昭和57年9月より実施した第3回定期検査に際し装荷された燃料の一部には,動力炉・核燃料開発事業団のウラン濃縮パイロットプラントで生産された濃縮ウランが初めて使用されている。

(2)実証炉の開発
 原子力委員会は,昭和57年8月27日に決定した「新型転換炉の実証炉計画の推進について」において,実証炉の建設・運転は,電気事業者及び動力炉・核燃料開発事業団の協力を得て電源開発株式会社が行うとの基本方針を決定した。
 上記基本方針に基づき,動力炉・核燃料開発事業団と電源開発株式会社は,実証炉開発の円滑かつ効率的な推進を図るため,昭和58年2月,「新型転換炉実証炉開発に関する相互協力基本協定」を締結した。また,電源開発株式会社と電気事業者との間で協力のための話合いが行われている。さらに,電源開発株式会社では,実証炉の建設地点として青森県大間町を候補地に選定し,昭和58年8月から立地環境調査を行っている。
 実証炉の設計は,昭和48年度から動力炉・核燃料開発事業団において行われてきた。同事業団は,概念設計,調整設計を経て,昭和56年度からは合理化設計を実施し,昭和58年6月末をもって合理化設計を完了した。合理化設計では,新型転換炉実証炉評価検討専門部会及びATR合同委員会が経済性向上の観点から設計において考慮すべきこととして指摘した事項を基本にして,設計の合理化,設計指針類への対応等に重点を置いて設計が行われた。今後は,電源開発株式会社がこれらの成果を引き継ぎ基本設計を行うこととしている。
 「ふげん」と合理化設計における実証炉の主要な設計仕様の比較を表に示すが,実証炉の設計は,大型化に伴う改良,「ふげん」の実績と軽水炉の経験の反映,設計の合理化等を行っている。その主要事項は次の通りである。

(i)燃焼度の向上
 燃料費と燃料集合体の年間取替数を低減するために,取替炉心の平均核分裂物質量を3.1%として,燃焼度を「ふげん」の17,000MWD/tから30,000MWD/tへ向上させた。
 なお,設備利用率の向上を図るため,12ヵ月連続運転できる設計としている。

(ii)チャンネル平均出力の増大
 圧力管の本数を削減し炉心を小型化するため,炉心の出力分布を平坦化し,チャンネル平均出力を「ふげん」より20%増大した。

(iii)燃料棒の細径化
 燃料棒直径を「ふげん」の16.5mmから14.5mmへと細径化して,燃料集合体当たりの燃料棒本数を28本から36本に変更し,燃料棒の単位長さ当たりの出力を低減した。
 そのほか,重水ダンプスペースの削除及びこれに伴う後備炉停止系の変更,カランドリアタンク側胴部の合理化,遮へいプラグとシールプラグの一体化,入口管オリフィスの削除,低圧注水系容量の合理化,応力腐食割れ対策,燃料取扱設備等の合理化等を図っている。

(3)研究開発の現状
 新型転換炉の研究開発は,動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの重水臨界実験装置,新型転換炉安全性試験施設等各試験施設を中心として実施されている。
 原型炉「ふげん」の運転のための研究開発は,機器システムの性能と信頼性の実証及びプルトニウム―ウラン混合酸化物燃料の炉心特性,運転特性の把握と実証を重点に進めている。
 また,実証炉のための研究開発は,安全審査に必要な実証試験を重点に進めている。


目次へ          第5章 第2節へ