第2章 原子力発電
5 原子炉の廃止措置

我が国において実用発電用原子炉の廃止措置が現実のものとなるのは,少なくとも15年程度先のことと予想される。
 原子力開発利用長期計画においては,原子炉の廃止措置は次の3種類に大別されている。
(i)密閉管理(原子炉を閉鎖し,これを適切な管理下におくもの。)
(ii)遮蔽隔離(原子炉に遮蔽等の工事を行って放射能を有する物質を強固に外部から隔離するもの。)
(iii)解体撤去(原子炉施設内の放射能を有する構造物等を解体撤去するもの。)また,原子炉の廃止措置を進めるに当たっての基本的考え方として,
(i)安全の確保(作業環境の放射線防護及び周辺公衆の被ばく防止等)
(ii)原子炉の廃止措置後における敷地の有効利用
(iii)地域社会との協調を挙げている。
 これらを考慮して,原子炉の廃止措置の進め方については,引き続き使用できる施設等の再利用を十分考慮した上で,原子炉の運転終了後できるだけ早い時期に解体撤去することを原則とし,個別には必要に応じ適当な密閉管理または遮蔽隔離の期間を経るなど諸状況を総合的に判断して決めるものとしている。
 これらの考え方に沿って原子炉の廃止措置をより円滑に実施するため,(i)解体及びその関連技術の向上,(ii)安全性の確保,(iii)資金面の対応策の確立,(iv)廃棄物対策,(v)諸制度の整備,を現時点から順次実施していく必要がある。
 このうち,技術開発については,昭和56年度から,日本原子力研究所において同研究所の動力試験炉(JPDR)をモデルとして,解体撤去のための技術開発を進めている。
 本技術開発は,10年程度の期間で行うプロジェクトであり,前半において解体に関する総合的な技術開発を行い,これにより得られた成果等を基に,後半においてJPDRを活用した解体の実地試験を行うこととしている。
 原子炉の解体撤去に係る技術開発課題
・解体システムエンジニアリングの開発
・放射能インベントリ評価技術の開発
・配管系内部放射能汚染非破壊測定技術の開発
・解体工法,解体機器の開発
・解体関連除染技術の開発
・解体廃棄物の処理,保管及び処分技術の開発
・解体に係る放射線管理技術の開発
・解体遠隔操作技術の開発
 なお,昭和57年12月には日本原子力研究所より科学技術庁にJPDRの解体届が提出され,科学技術庁は審査の結果,災害の防止上支障ないものと判断し,原子力安全委員会にJPDRの解体について報告を行った。同委員会は昭和58年1月,これを了承するとともに,実地試験(本格解体)に先立ち,科学技術庁よりその処理方針についてあらためて報告を受け検討を行うこととしている。
 また,通商産業省においては商業炉の廃止後の措置の対策に関する調査・検討を実施しているほか,廃止措置に係る技術のうち,安全性,信頼性の観点から特に重要な技術の実用化を促進するため確証試験を進めている。


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