第1章 原子力開発利用の動向
3 原子力研究開発の進展状況

(2)原子力研究開発の推進

 我が国の原子力研究開発は前述したように,新型転換炉,ウラン濃縮及び再処理が実用化移行段階に達しているほか,高速増殖炉が実用化移行の一歩手前の原型炉段階に達しており,これらの早期実用化に向けて一層の努力が必要となる時期に至っている。これらのプロジェクトは,これまで主として国の資金負担の下に動力炉・核燃料開発事業団が中心となり,研究開発が進められてきている。一方,我が国の電気事業者,原子力関連機器メーカー等の民間企業は,20余基の軽水炉プラントの建設・運転,国の研究開発プロジェクトへの参加等を通じて相当の技術を蓄積してきている。今後の実用化に向けては,これまで蓄積された技術を基に,民間が主体的かつ積極的な役割を果たすことが期待されるところである。その際,技術が実用化移行段階に達しているといっても,依然として技術的,経済的リスクは少なくないので,国は適切な支援を行うこととしている。
 他方,民間に技術が蓄積されたといっても,安全性に関する研究,放射性廃棄物処分等核燃料サイクル確立に必要な研究開発,核融合・新型炉等に係る先導的な技術の研究開発,あるいは基礎的な研究において国の果たす役割は依然として重要である。原子力研究開発は,その進展に伴い,大規模化するとともに関連分野も広範となり,所要資金は増大していくものである。昨今の我が国の厳しい財政事情に鑑み,研究開発を進めるに当たっては,資金の効率的な活用に留意することは当然であるが,長期的視点に立って,計画的に進めていくことが重要である。


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