第11章 国際協力活動
1 研究開発等に関する国際協力

(2)多国間協力

i 安全研究に関する協力
 日本原子力研究所は,西独研究技術省及びNRC(米国)との間に,昭和55年4月,大型再冠水協力協定を締結し,LOCA時の再冠水中の緊急炉心冷却装置の挙動に関する協力を行っている。また,日本原子力研究所は,スウェーデンのストドピックエネルギー技術研究所の材料試験炉「R2」を使用して実施されている「デモランプ計画」に参加し,BWR燃料の過出力ランプ状照射を行うことにより,燃料破損に対する改良効果の究明を行っている。

ii 高速増殖炉に関する研究協力
 動力炉・核燃料開発事業団は,カールスルーエ研究所,インターアトム(西独)及びフランス原子力庁との間で,昭和53年6月から三国間の高速炉開発に関する協力を行っている。また,動力炉・核燃料開発事業団は,フランス原子力庁カダラッシュ研究所のCABRI炉を使用して行われている「日独仏共同カブリ計画」に参加し,各種の情報交換,専門家会合等を行っている。

iii 開発途上国に対する協力
 我が国は,昭和53年8月,「原子力科学技術に関する研究,開発及び訓練のための地域協力協定(RCA)」に加盟した。同協定は,アジア・太平洋地域の国際原子力機関(IAEA)加盟国間の原子力科学技術,特に放射線・アイソトープの利用に関する研究開発及び訓練の推進,協力を目的とするものであり,昭和57年6月11日に現協定の期限が満了となったため,更に5年間期間延長がなされた。
 我が国は,現在,このRCA計画に,資金・技術両面にわたり域内の原子力先進国として積極的に協力を行っており,特に,食品照射プロジェクト,工業利用プロジェクト,医学・生物学利用プロジェクト(いずれも放射線・アイソトープの利用分野)に関しては,原子力先進国として中心的な立場で,各種のワークショップ,セミナー,研修生の受け入れ,専門家派遣等を通じた協力を行っている。またRCA計画が発足してから本年10年目を迎えたため,第4回RCA政府専門家会合が,マレーシアのクアラルンプールで開催されたのを機会にRCA計画10周年記念式典が開催された。
 開発途上国においては,現在の放射線・アイソトープの利用分野のみならず,軽水炉発電技術等原子力のエネルギーとしての利用分野についても,我が国に強い協力要請を行っており,今後,このような新しい分野での協力が,活発になってくることが予想される。
 また,我が国は,昭和57年8月16日から9月10日にかけて東京においてRCA加盟国6ヵ国から12名の専門家を招き昨年に引き続き第2回目の「放射線とアイソトープの医学・生物学利用に関するワークショップ」(環境放射能と関連課題に関するスタディーミーティング)を国際協力事業団の協力を得て,放射線医学総合研究所を実施機関として実施した。

 国連開発計画(UNDP)の資金協力を得て実施されているRCA計画の中で最大のものである放射線・アイソトープの工業利用プロジェクトについては,本年4月から正式に開始され,また1年の暫定的期間ではあるが,本プロジェクト管理のためのオフィスが,我が国政府及び民間の協力を得て東京に設置され,プロジェクト管理者(チーフテクニカルアドバイザー)が,昭和57年6月から1年間在京することとなった。


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