第11章 国際協力活動
1 研究開発等に関する国際協力

(1)二国間協力

i 日米原子力安全研究協力
 昭和48年,科学技術庁原子力局と当時の米国原子力委員会(現在は原子力規制委員会(NRC))の間で始められた本協力については,対象分野を当初の軽水炉から,高温ガス炉,高速増殖炉へと拡大するとともに,情報交換にとどまらず,日米双方が互いの研究開発計画を調整し合うなど,積極的,効率的に推進されている。現在,本協力の一環として,日本原子力研究所が,米国の「LOFT計画」(冷却材喪失事故条件下での核熱水学的及び構造的現象に関する総合試験)に参加するとともに,日本原子力研究所における「NSRR計画」(反応度事故時の燃料の安全性に関する研究)とNRCにおける「PBF計画」(出力異常時の炉心安全性研究)との間で共同研究を,研究者,技術者の相互派遣等を通じ活発に行っている。

ii 日米高速増殖炉協力
 昭和44年3月,動力炉・核燃料開発事業団と米国原子力委員会との間で締結された「日米高速増殖炉協力協定」は,高速増殖炉開発の進展に伴い,昭和54年1月,更新・改訂され,動力炉・核燃料開発事業団と米国エネルギー省(DOE)の間で新協定が締結された。この協定に基づき,最近では,昭和57年5月11日〜14日にかけて第5回日米高速増殖炉合同調整会合が東京で開催される等活発な協力が行われている。特にこの会合では,高速増殖炉の安全設計基準の共同研究について米側から提案され,今後検討していくことで合意された。

iii 日米規制情報交換協力
 昭和49年に科学技術庁原子力局(現在は原子力安全局),資源エネルギー庁と米国(AEC)(現在はNRC)との間で始められた本協力の下で,両国における規制の体系,その考え方及び経験について詳細かつ迅速な情報交換が行われている。

iv 日米核融合協力
 「エネルギー及びこれに関する分野における研究開発のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(昭和54年5月締結)に基づき,昭和54年8月,日本原子力研究所とDOEの間で,核融合に関する協力が開始された。本協力においては,ダブレット-IIIを用いた共同研究,交流計画,プラズマ物理学に関する共同研究,共同計画の4つの分野で協力が行われている。なお,毎年度の具体的な協力計画を定める日米核融合調整委員会については,昭和57年5月13日・14日にかけて,第4回委員会が東京で開催され上記4分野の今年度の協力計画が合意された。

v 日独原子力安全研究協力
 昭和49年10月に締結された日独科学技術協力協定に基づき,軽水炉施設の安全性に関する分野において研究協力が行われている。また,日本原子力研究所における「NSRR計画」(反応度事故時の燃料の安全性に関する研究計画)と西独カールスルーエ研究所における「PNS計画」(冷却材喪失事故時及び出力・冷却不整合時の燃料の安全性に関する研究計画)との間の研究協力が昭和55年1月開始され,現在,各種情報交換,専門家の相互派遣が行われている。最近では,特に,昭和57年5月25・26日の両日東京に於て第7回日独科学技術合同委員会が開催され,独側より要請のあった蒸気発生器細管,耐震性等の信頼性実証試験の結果の情報交換を行うことで合意した。

vi 日独高温ガス炉協力
 昭和54年2月,日本原子力研究所と西独ユーリッヒ研究所の間で協力が開始され,各種の情報交換を行っている。本協力は,日独軽水炉安全研究協力と同様,日独間の科学技術協力協定に基づいて行われているため,昭和57年5月26・27日の両日東京において行われた日独科学技術合同委員会の場において,本協力の一層の促進について意見の交換が行われた。

vii 日独高レベル放射性廃棄物管理分野技術協力
 昭和56年2月,動力炉・核燃料開発事業団と西独カールスルーエ研究所の間で協力協定が締結され,高レベル液体廃棄物の固化,高レベル固化廃棄物の特性及び高レベル廃棄物管理システムにおける遠隔繰作等の分野において,各種情報交換,専門家会議の開催,専門家の相互派遣等を行うこととなった。本協定に基づき,昭和57年5月31日〜6月4日に第2回の高レベル廃棄物管理会議が東京で開催される等協力が進められている。

viii 日仏安全研究協力
 昭和54年3月,科学技術庁原子力局とフランス原子力庁との間で日仏軽水炉安全研究協力取極が締結され,これに基づき,昭和56年2月,日本原子力研究所とフランス原子力庁との間で,NSRR/PHEBUS共同研究協定が締結され(反応度事故時の燃料の安全性研究と冷却材喪失事故時の燃料の安全性に関する研究間の協力)研究成果の交換等が行われている。本取極に基づく第3回調整官会合が昭和57年6月23日パリに於て開催された。

ix 日仏規制情報交換協力
 昭和54年3月,科学技術庁原子力安全局,資源エネルギー庁とフランス産業省原子力施設安全本部との間で,日仏間の規制情報交換に関する取極が締結され,各種の情報交換が行われている。

x 日英高速炉協力
 昭和46年以来,日本原子力研究所,動力炉・核燃料開発事業団と英国原子力公社との間で,協力が行われており,昭和57年9月には,第8回日英高速炉会議が東京で開催された。

xi 日ソ原子力協力
 昭和48年に締結された日ソ科学技術協力協定に基づき,核融合及び高速増殖炉に関する協力が行われている。特に高速炉協力については,動力炉・核燃料開発事業団とソ連原子力利用国家委員会との間で,昭和57年2月15日〜19日において第3回日ソ高速炉セミナー (構造材料,燃料の試験方法に関するもの)が,更に昭和57年7月25日〜30日において,ソ連モスクワ近郊で第4回日ソ高速炉セミナー(炉物理)が開催された。
 一方,民間における協力については,昭和52年11月,(社)日本原子力産業会議とソ連原子力利用国家委員会の間で協力協定が締結され,政府間の協力分野以外の分野(核燃料技術,安全性,多目的利用炉,放射線利用等)において,毎年度2回ずつセミナーが開催されている。

xii 日加重水炉協力
 重水炉に関する協力については,動力炉・核燃料開発事業団とカナダ原子力公社との間に,情報交換を主体とした協力が行われている。

xiii その他の二国間協力
 昭和57年5月26・27日の両日に亘って開催された日独科学技術合同委員会に於て,特に保障措置技術に関する技術情報交換協力が,科学技術庁原子力安全局と,西独研究技術省の間で進めることについて合意がなされ,今後,協力のためのパネルを設ける等具体的な協力内容について詰めが行われることとなった。この他,同じく核燃料サイクルの安全性に関する協力についても,同委員会の場で,協力のための検討が行われることとなった。
 また,民間ベースの協力として,(社)日本原子力産業会議と中国第二機械工業部(現在は,原子力工業部と改名)との間に,昭和56年9月原子力分野の協力のための覚書に基づいて各種セミナーの開催及び,調査団の相互派遣等の交流が行われている。


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