第10章 核拡散防止
4 保障措置

(2)保障措置実施の状況

(i) 計量管理報告及び情報処理
 原子力施設設置者は,原子炉等規制法に基づき,国に在庫変動報告,物質収支報告及び実在庫量明細表を提出することが義務づけられている。昭和56年の報告件数及びそれらに含まれるデータの処理件数は,次表のとおりである。

 なお,計量管理報告に基づきとりまとめた我が国の昭和57年6月末の核燃料物質保有量は表のとおりである。
 特に昭和56年度においては,(財)核物質管理センターの情報処理システムの,原産国別多重国籍管理及び国内核燃料サイクル全体の核物質の流れのより適格な把握の面の整備,充実を図った。
 昭和56年における我が国の核燃料サイクルにおける核物質の流れは,図のとおりである。

(ii) 査察
 我が国の原子力施設に対しては,政府による国内査察を基本とし,さらにIAEAによる国際査察が実施されている。昭和56年の保障措置対象施設及び国内査察実績は次表のとおりである。なお,昭和56年に我が国及びIAEAが我が国の原子力施設に対して実施した保障措置の結果,核物質の転用の可能性は皆無であったとの結論が得られた。

 また,国際原子力機関は,その人員,費用の効率的な運用のために,長期滞在査察員の指名を我が国に提案し,昭和56年8月,合意に達した。現在3名が指名されている。
 なお,昭和57年6月,保障措置の実施に伴う問題点の検討を行うため,日本・IAEA保障措置合同委員会の第3回会合が,東京において開催された。
 この会合において,我が国における保障措置実施の一層の改善のための国内保障措置制度の整備並びに保障措置の実施及び保障措置技術の改善における日本とIAEAとの間の協力が高く評価された。さらに,具体的な問題として,新しい査察機器の適用の手順,IAEA査察機器の国内移動及び施設保管,核物質の封印システムのあり方,査察スケジュールの調整手順,保障措置分析の改善等の問題が議論され,所要の改善が我が国とIAEAとの間で図られることとなった。

(iii) 保障措置分析
 昭和56年度においては,(財)核物質管理センター保障措置分析所においてウラン関係試料約500個,プルトニウム関係試料約170個の分析を行った。これに加えて,合理化のため同年度においては,ウラン試料分析のための自動滴定装置の開発,査察現場におけるプルトニウムの同位体組成測定システムの開発が行われた。


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