第10章 核拡散防止
2 核拡散防止に関する我が国をめぐる二国間の動向

(2)日豪原子力協定の改正

 世界的な核拡散に対する懸念の高まりの中で,豪州は,昭和52年5月,ウラン輸出に際して核拡散防止強化を図ることを目的とした政策(保障措置政策)を発表し,同政策具体化のため関係各国との間で原子力協定改正締結交渉を開始した。
 我が国との間での交渉は,昭和53年8月に開始され,昭和57年1月に妥結し,同年3月5日に旧協定に代わる新協定への署名が行われた。同協定は第96国会に提出され,同年7月9日に批准承認され8月17日発効した。
〔保障措置政策の内容〕
i 豪州産核物質の輸入国は,非核兵器国にあってはNPT加盟を,また核兵器国にあっては核爆発目的に使用せずかつIAEAの保障措置を適用するとの確約を条件とする。
ii 輸入国に豪州産核物質が存在する限り保障措置が継続して適用されなければならない。
iii 豪州産核物質の第三国移転,再処理及び高濃縮には豪州政府の事前同意を必要とする。
iv 豪州産核物質の輸入国においては,適切な防護措置が講じられていなければならない。
v 今後(昭和52年5月以降)締結される契約に基づくウラン輸出に当たっては,以上の要件を満たす協定が締結されていることを条件とする。
〔新日豪原子力協定〕
 《主要な改正点》
 i 豪州産核物質に関し規制の対象となる行為として「管轄外移転」の他に新たに「再処理」及び「20%を超える濃縮」が加えられ,このうち,「管轄外移転」及び「再処理」の規制については,IAEA保障措置の適用等の一定の条件の下で,再処理及び管轄外への移転が自由に行い得るとの長期的包括的事前承認方式となった。
 ii 協定に基づいて入手した重水等の資材及び核物質の濃縮,再処理又は重水の生産に関する核拡散防止のために特に規制すべき技術情報を新たに管轄外移転の際の事前同意の対象としたこと(従来は,核物質及び設備のみが対象となっていた)。
 iii 核物質に対して適切な防護措置をとることとしたこと。
 iv いわゆる平和的核爆発を明示的に禁示したこと。
 v 核兵器不拡散条約(NPT)に基づく保障措置協定による保障措置が適用されることを定めたこと。
 《交渉経緯》
 昭和53年8月   第1回交渉(於東京)
     12月   第2回交渉(於キャンベラ)
 昭和54年7月   第3回交渉(於東京)
 昭和55年8月   非公式協議(於キャンベラ)
     12月   非公式協議(於東京)
 昭和56年3月   非公式協議(於東京)
     4月   第4回交渉(於キャンベラ)
     6月   第5回交渉(於東京)
     8月   第6回交渉(於キャンベラ)
     9月   第7回交渉(於東京)
     11月   非公式協議(於キャンベラ)
     12月   非公式協議(於東京)
 昭和57年1月   改正交渉妥結
     3月5日  署名(於キャンベラ)
     7月9日  国会承認
     8月17日 新日豪原子力協定発効
 《長期的包括的事前承認方式の対象及び条件》
 i 再処理
 対象:日本国内の軽水炉,新型転換炉「ふげん」,高速増殖炉「常陽」及び「もんじゅ」並びに原子力船「むつ」で発生した使用済燃料の東海再処理工場または動力炉・核燃料開発事業団の高レベル放射性物質研究施設(CPF)における再処理。
 条件:イ.再処理にIAEAの保障措置が適用される。
    ロ.回収したプルトニウムをIAEAの保障措置の下で新型転換炉「ふげん」,高速増殖炉「常陽」または「もんじゅ」,もしくは軽水炉に
   おけるプルトニウム利用についての試験(美浜1号炉)で使用する。
 ii 管轄外移転
 対象:英国核燃料公社(BNFL),フランス核燃料公社(COGEMA)との再処理委託契約に基づくBNFLウィンズケール工場,COG-EMAラ・アーグ工場での再処理のための使用済燃料の移転。
 条件:イ.移転先の国が豪州との間の原子力協定に違反していない。
    ロ.移転先の施設の保障措置が根本的に変化していない。
 (再処理工場,回収プルトニウムの使用施設は通報または協議により追加できる。)


目次へ          第10章 第2節(3)へ