第9章 原子力産業

 原子力産業は,原子力関連機器の製造,濃縮,加工,再処理等の核燃料サイクル関連の事業,その他建設,保守サービス,輸送等の業を行うものの総称であるが,原子力に関する活動を専門に行っている企業は少なく,機械製造業,電気機器製造業等の一般の産業がその企業活動の一部として原子力関連機器の製造等を行っている。昭和55年度において原子力機材の売上げ実績を有する企業は,250社を超えているが,原子力専業は20社に満たない。
 原子力産業の売上げ高は,昭和55年度に最終需要相当分で6,000億円強と見込まれるが,その8割程度は,原子力発電関連の売上げとなっている。このため現在の原子力産業規模は,原子力発電開発の進展に大きく依存していると言える。また,原子力産業の規模を他産業と比較すると,自動車産業の約10兆円には遠く及ばないものの,時計産業の5,000億円程度を上まわる規模となっている。
 また,輸出入についてみると,輸出200億円程度に対し,輸入は5,000億円を超えており,輸入超過となっている。輸入の大部分は核燃料関係であり,原子力機材関係では輸出入の差は小さいものと考えられる。また輸出額の売上げ高に対する割合は小さいが,我が国の原子力産業の技術レベルが向上し,また産業規模も大きくなってきていることから,今後原子力機材の輸出を拡大していくことが期待される。
 一方,技術関係の輸出入を見てみると,我が国の軽水炉の建設等が技術導入により進められたことから,技術導入に伴う支出は比較的大きく,昭和55年度において60億円程度となっている。しかしながら,技術輸出が同程度あるとの調査結果もあり,近年一方的な技術導入の時代から相互交流に移りつつあることがうかがえる。
 さらに,原子力産業の研究投資額についてみると,その額は,500億円を超えており,売上げ高に対する割合は,6%を超えている。これは一般産業全体における割合2%弱に比べ高い水準にあり,研究開発が積極的に進められているものと考えられる。


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