第7章 放射線利用

2 農林水産業への利用

 農林水産業における放射線利用としては,食品照射,害虫の不妊化等があげられる。
 食品照射は,放射線を利用して殺虫,殺菌,発芽防止等を行い,食品の保存期間を延長するものであり,食品流通の安全化及び食生活の改善に大きく寄与するものと期待されている。食品照射の研究開発については,昭和42年9月に原子力委員会が策定した「食品照射研究開発基本計画」に基づき,関係国立試験研究機関,日本原子力研究所,理化学研究所等において研究開発が進められた。馬鈴薯については,昭和47年8月,放射線利用が許可され,既に,北海道士幌町農業協同組合において実用化されている。玉ねぎについては,昭和55年7月に研究成果がとりまとめられ,現在,実用化について農林水産省において検討中である。その他の品目(米,小麦,ウィンナーソーセージ,水産ねり製品,みかん)については,基本計画に従って各実施機関が研究開発を行い,昭和56年度をもって概ね完了した。
 また,不妊虫放飼法は, 60Coのガンマ線照射による不妊雄を大量に野外に放飼することにより,野外の雌が正常な雄と交尾する機会を低下させ,正常な産卵を抑制し,次世代の固体数を減少させることを数世代にわたって繰り返し根絶に至らしめるものであり,農薬による防除と異なり,人体及び環境への影響のない画期的な方法である。沖縄県久米島のウリミバエについては,不妊虫放飼を開始して4年後の昭和53年に根絶に成功した。なお,現在は,沖縄本島周辺の慶良間諸島及び奄美群島の喜界島でウリミバエの不妊虫放飼を行っているほか,小笠原諸島においてもミカンコミバエの根絶を目的とした不妊虫放飼を行っている。さらに将来は南西諸島全域からウリミバエを根絶することを目途に那覇市及び名瀬市において不妊虫大量増殖施設の建設を行っているところである。


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