第5章 核燃料サイクル
6 放射性廃棄物の処理処分対策

(2)放射性廃棄物処理処分の研究開発

i 低レベル放射性廃棄物処理処分
 低レベル放射性廃棄物の処分については,試験的海洋処分をできるだけ早い時期に実施することを目標に,昭和56年度も前年度に引き続き,関係省庁,(財)原子力環境整備センター等において,試験的海洋処分の実施に関し所要の調査研究が進められた。一方,陸地処分については,日本原子力研究所により,放射性同位元素を用いた放射性核種の地中挙動に関する試験,(財)電力中央研究所により,陸地処分のための各種パッケージ及び処分施設の基準作成に関する試験,(財)原子力環境整備センターにより,秋田県尾去沢における浅層処分を模擬した状態での安定同位元素による各種試験等が行われた。また,同センターにおいて,昭和56年度よりモニタリング手法開発のための調査研究が行われている。
 なお,海洋処分等に必要な制度面の整備については,昭和53年度に,国による確認の制度が設けられるとともに,投棄物の固型化等の方法,放射能濃度限度等海洋処分の基準が定められた。また,国際協調の下に海洋処分を実施するとの方針から廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条約)を批准するため,昭和55年5月,原子炉等規制法及び放射線障害防止法の一部を改正するとともに,同年10月,ロンドン条約批准書の寄託を行い,同年11月,ロンドン条約に加盟した。さらに,昭和56年7月,経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)の多数国間協議監視制度に参加した。
 また,試験的海洋処分の実施について,国内関係者に対する説明を実施するとともに,昭和55年8月以降5回にわたり関係太平洋諸国に専門家を派遣し説明を行っており,各国の理解を得るための努力が重ねられている。昭和56年9月にグアム島で開催された第3回太平洋地域首脳会議へ説明団を派遣した際には,我が国として安全性を十分確認の上OECD/NEA等の基準に基づき行う等の基本的な考え方を説明するとともに,我が国の海洋処分評価について,太平洋諸国から提示されていた批判に対し技術的観点から安全性の説明を行ったところである。

ii 高レベル放射性廃棄物処理処分

(i) 固化処理技術開発
 固化処理については,世界的に主流となっているホウケイ酸ガラスによる固化処理技術に重点をおいて研究開発を進めることとし,昭和62年度運転開始を目標に,パイロットプラントを建設し,固化処理技術を実証することとしている。固化処理技術の開発を進めるにあたっては,実験室規模の試験と実規模の試験,コールド試験とホット試験を組み合わせて行うこととしており,動力炉・核燃料開発事業団においては,昭和53年度から模擬廃液を用いた実規模でのガラス固化処理の試験を進めているほか,昭和57年度からは,高レベル放射性物質研究施設(CPF)において,東海再処理工場で発生した実廃液を用いた実験室規模でのガラス固化処理の試験を開始することとしている。
 さらに,科学技術庁無機材質研究所においては,無機材質の高レベル放射性廃棄物処理処分への利用に関する基礎的研究を,通商産業省大阪工業試験所は,ガラス固化処理に関する基礎的研究を進めている。

(ii) 地層処分研究開発
 地層処分については,地層という天然バリア(障壁)に工学バリアを組み合わせることによって高レベル放射性廃棄物を人間環境から隔離することを基本的考え方とし,2000年以降できるだけ早く処分技術を確立することを目標に研究開発を進めることとしている。このため,現在,動力炉・核燃料開発事業団においては,我が国における地層の賦存状態の調査を文献調査及び地質概査により行うとともに,処分に適する地層を選定するための手法を開発するため,昭和55年度からは北海道下川鉱山,昭和56年度からは宮城県細倉鉱山において岩石の透水性や熱的特性の試験等を行っているほか,スウェーデンのストリパ鉱山におけるOECD/NEAの国際共同研究計画に参加し,岩石の基礎的な特性や試験方法について試験研究を行っている。
 以上の技術開発と並行して,日本原子力研究所においては,処理処分の各段階の安全評価手法の整備を図るため,ガラス固化体の特性,処分条件下での放射性物質の挙動等の基礎的な試験研究を行っており,昭和57年度からは廃棄物安全試験施設において放射性物質を用いた試験を進めることとしているほか,ガラス固化以外の新固化技術,群分離等に関する基礎的研究を進めている。


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