第5章 核燃料サイクル
4 再処理

(1)東海再処理工場

 東海再処理工場は我が国初の再処理工場であり,動力炉・核燃料開発事業団により東海村に建設されたものである。同工場は昭和56年1月から本格運転に入ったが,本格運転の前に処理した量を含め昭和52年9月から昭和57年6月までに累計約150トンの使用済燃料を処理している。
 その間,昭和56年2月に酸回収精留塔の加熱用蒸気配管への硝酸混入等のトラブルがあったが,これを克服している。また昭和57年4月に2基あるウラン溶解槽のうち1基が加熱用蒸気系への放射能漏れを生じたため現在残り1基の溶解槽を使用した運転となっている。
 東海再処理工場の運転は,日米原子力協定による規制を受けており,昭和52年9月の運転当初から,処理枠,運転期限が定められたが,昭和56年10月30日の日米共同決定及び共同声明において,東海再処理工場の運転については,長期的には,昭和59年末までに作成される米国産核燃料の再処理一般に関する長期的取決めの中で扱うこととし,それまでの間は設計能力(210トン/年)の範囲内で運転することとされている。

 同工場は,フランスのサンゴバン社の設計によるものであるが,環境への放出放射能量を極力抑えるという我が国の方針に合致させるため,中・低レベル廃液処理用蒸発缶での凝縮液を再度蒸発処理することによって放出量を低減させる施設(E施設,昭和50年7月完成)及び発生源において極低レベルとして区分していた廃液を蒸発処理する施設(Z施設,昭和54年1月完成)を我が国が独自に設計・建設した。さらに,これらに加え,現在,せん断,溶解オフガス中のクリプトンを液化して回収する技術開発施設の建設等を行っており,東海再処理工場における放出放射能低減化に努めてきている。


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