第4章 新型炉の開発

3 多目的高温ガス炉

 我が国の原子力利用は,これまで原子力発電を主軸に展開してきたが,より長期的には,核熱エネルギーを製鉄,水素製造,石炭ガス化,石炭液化等に用いる原子炉の多目的利用を実現する必要がある。
 このため,原子力委員会は,昭和57年6月決定の原子力開発利用長期計画において,核熱エネルギーを産業に供給する原子炉として多目的高温ガス炉を開発することとし,その第一段階として,発生高温ガスの温度,950°C程度を目標とする実験炉を1990年頃の運転開始を目途に建設することとした。
 多目的高温ガス炉の研究開発については日本原子力研究所において,材料試験炉(JMTR)に接続した高温ガスループ(OGL-1)の運転,炉心耐震試験,高温耐熱材料,被覆粒子燃料,黒鉛材料,伝熱流動等に関する研究が進められている。更に,昭和53年度から大型構造機器実証試験ループ(HENDEL)の建設が進められ,昭和56年度には,本体部が完成した。
 また,従来から進めてきた実験炉設計の成果を踏まえて,実験炉プラントシステムの総合設計を実施した後,昭和55年度から,詳細設計を進めているところである。
 昭和57年度においては,引き続き詳細設計及びHENDELの建設を進め試験部T1を完成させることとしている。
 国内におけるこれらの研究開発活動のほか,昭和51年12月,国際原子力機関において高温ガス炉の研究協力が取り上げられ,ワーキンググループが設けられており,これの運営への協力並びに各種の専門家会議への参加を通じて国際協力を進めている。
 日米間の協力については,昭和51年3月,軽水炉安全性情報交換取極め(昭和48年3月)に「高温ガス炉の安全性研究」が追加され,高温ガス炉情報交換会議が,昭和52年9月,昭和53年11月及び昭和57年6月に開催された。また,昭和55年6月,日本原子力研究所とGA社との間で,高温ガス炉関係の情報交換に関する覚書が交換され,昭和57年6月に2ヵ年延伸された。
 日独間の協力については,昭和52年4月,日独科学技術協力協定に基づく第3回合同委員会で,「高温ガス炉に関するパネル」を設置することが決定され,昭和52年5月,昭和53年6月,昭和55年3月にパネルが開催された。
 また,昭和54年2月,日本原子力研究所とユーリッヒ研究所との間で,研究協力協定が締結され,昭和57年2月に3ヵ年延伸されるとともに,7項目の特定研究課題をとり上げ,具体的な協力を進めている。


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