第4章 新型炉の開発
1 新型転換炉

(2)実証炉の設計の進展

i 設計の経緯
 実証炉の開発は昭和48年度に「新型転換炉評価研究」として開始された。
 昭和49年度には大型炉の基本構想をまとめるために検討評価を行った。
 昭和50年度から53年度に至る約3年間にこの基本構想をもとに,電気出力60万kWの実証炉の概念設計を行った。この概念設計の目的は,「ふげん」の設計・建設の経験と研究開発の成果を活用して,技術的にも経済的にも実現の可能性のある具体的な実証炉の設計構想を提案することであった。
 昭和54年度からは,約1年間にわたる「実証炉調整設計」を進め,昭和54年に本格運転を開始した「ふげん」の運転実績と実証炉の概念設計の成果及び軽水炉の経験などを反映した。この調整設計の目的は,同プラントの設備設計を行って大容量化に伴う技術の実証及び経済性の見通しの確立を図ることであった。
 調整設計に引き続いて,昭和56年度に開始した実証炉合理化設計は,新型転換実証炉評価検討専門部会及びATR合同委員会が経済性向上の観点から設計において考慮すべきこととして指摘した事項を基本にして,設計の合理化,改訂指針類への対応等に重点を置いて設計を進めている。

ii 原型炉「ふげん」との比較
 「ふげん」と実証炉の主要な設計仕様の比較を表に示すが,実証炉の設計は大型化に伴う改良,「ふげん」の実績と軽水炉の経験の反映及び設計の合理化等を行っている。その主要事項は次の通りである。

(i) 燃焼度の向上
 燃料費と燃料集合体の年間取替数を低減するために,核分裂性プルトニウムとウラン―235の和を2.7%として平衡炉心では軽水炉と同程度の燃焼度27,000MWD/tが得られる設計とした。
 合理化設計ではさらに,30,000MWD/tへと燃焼度向上を目指している。

(ii) チャンネル平均出力の増大
 圧力管の本数を削減し炉心を小型化するため,燃料の富化度分布を調整して炉心の出力分布を平坦化し,チャンネル平均出力を「ふげん」より20%増大した。
 燃料棒直径を「ふげん」の16.5mmから14.5mmへと細径化して,燃料集合体当りの燃料棒本数を28本から36本に変更し,最高線出力密度を492W/cmに低減した。
 そのほか,重水ダンプスペースの削除,鉄水遮蔽体の形状変更,SCC対策,燃料交換方法の合理化等を図っている。


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