第2章 原子力発電

5 原子炉の廃止措置

 我が国において実用発電用原子炉の廃止措置が現実のものとなるのは,少なくとも15年程度先のことと予想されるが,原子力委員会では,昭和55年11月,廃炉対策専門部会を設置し,我が国の国情に適した措置方法及びそのための対策について審議を進めてきた。同専門部会は昭和57年3月原子力委員会に報告書を提出し,その内容は同年6月に取りまとめられた原子力開発利用長期計画に盛りこまれた。
 この中で原子炉の廃止措置は次の3種類に大別されている。
 i 密閉管理(原子炉を閉鎖し,これを適切な管理下におくもの。)
 ii 遮蔽隔離(原子炉に遮蔽等の工事を行って放射能を有する物質を強固に外部から隔離するもの。)
 iii 解体撤去(原子炉施設内の放射能を有する構造物等を解体撤去するもの。)
 また原子炉の廃止措置を進めるに当たっての基本的考え方として,
 i 安全の確保(作業環境の放射線防護及び周辺公衆の被ばく防止等)
 ii 原子炉の廃止措置後における敷地の有効利用
 iii 地域社会との協調
を挙げ,これらを考慮して,原子炉の廃止措置の進め方については,引き続き使用できる施設等の再利用を十分考慮した上で,原子炉の運転終了後できるだけ早い時期に解体撤去することを原則とし,個別には必要に応じ適当な密閉管理または遮蔽隔離の期間を経るなど諸状況を総合的に判断して決めるものとしている。
 さらに,これらの考え方に沿って原子炉の廃止措置をより円滑に実施するため,i 解体及びその関連技術の向上,ii 安全性の確保,iii 資金面の対応策の確立,iv 廃棄物対策,v 諸制度の整備,を現時点から順次実施していく必要がある。
 このうち,技術開発については,昭和56年度から,日本原子力研究所において同研究所の動力試験炉(JPDR)をモデルとして除染技術,解体技術,遠隔繰作技術等,解体撤去のための技術開発を進めている。
 また,通商産業省においては商業炉の廃止後の措置の対策に関する調査・検討を実施しているほか,廃止措置に係る技術のうち,安全性,信頼性の観点から特に重要な技術の実用化を促進するための確証試験を進めている。


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