第1章 原子力開発利用の動向と新長期計画
4 新しい原子力開発利用長期計画

(1)新長期計画策定の経緯

 長期計画の役割は,原子力開発利用を国民の理解と協力の下に計画的かつ総合的に遂行していくため,原子力開発利用に関する明確なビジョンを関係者はもちろん広く国民に提示することである。
 前回の長期計画は昭和53年9月に策定したものであるが,その後,第2次石油危機の経験等から原子力発電が石油代替エネルギーの中核としての役割を果たすことについての期待が一段と高まったこと,また,研究開発の進展により大型プロジェクトの幾つかが実用化を達成していく段階を迎えたこと,さらに,核不拡散をめぐる国際的大論争とも言うべき国際核燃料サイクル評価(INFCE)において原子力平和利用と核不拡散は両立し得るとの結論が得られたことなど,我が国の原子力開発利用を取り巻く内外情勢の大きな変化に対応して,原子力開発利用をさらに積極的に推進するために新しい長期計画の策定が必要となった。
 このため,原子力委員会は,昭和56年3月,長期計画の見直しを行う長期計画専門部会を設置した。同専門部会は,既に設置されていた関連する専門部会等の審議結果を踏まえつつ検討を進め,昭和57年6月,原子力委員会に報告を行い,これを受けて原子力委員会は新しい長期計画を決定した。
 新長期計画は,21世紀を展望し,今後10年間における原子力開発利用に関する重点施策の大綱とその推進方策を示したものであり,今後の原子力政策の長期的指針となるものである。また,その中で我が国のプルトニウム利用に関する中,長期にわたる展望を従来にも増して明確にした点が特徴の一つとなっている。


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