第1章 原子力開発利用の動向と新長期計画
1 着実に進展する原子力発電

(7)原子炉の廃止措置に関する施策

 恒久的に運転を終了した原子炉の廃止措置は,長期的に重要な課題であるばかりでなく,当面の原子力施設の立地対策上も地域住民の関心事項であることから,その長期的展望を明らかにすることが必要である。
 我が国において実用原子力発電所の廃止措置が現実のものとなるのは,早くても15年程度先のことと予想されるが,原子力委員会は昭和55年11月廃炉対策専門部会を設置し,同専門部会は我が国の国情に適した措置方法について審議を進め,昭和57年3月報告を行った。その報告は,新しい長期計画に盛り込まれ,その中において原子炉の廃止措置については,安全の確保を前提に地域社会との協調を図りつつ進めるべきであり,さらに敷地を原子力発電所用地として引き続き有効に利用することが重要であるとしている。また原子炉の廃止措置の進め方については,引き続き使用できる施設等の再利用を十分考慮した上で,原子炉の運転終了後できるだけ早い時期に解体撤去することを原則とし,個別には必要に応じ適当な密閉管理又は遮蔽隔離の期間を経るなど諸状況を総合的に判断して決めるものとしている。
 技術面では,現時点でも既存技術又はその改良により原子炉の廃止作業に対応できると考えられているが,作業者の受ける放射線量の低減等安全性の一層の向上を図るなど,我が国に適した解体技術等を確立する必要があり,このため,昭和56年度から科学技術庁の委託により日本原子力研究所において同研究所の動力試験炉(JPDR)をモデルとして除染技術,解体技術,遠隔操作技術等解体撤去のための技術開発を進めている。この技術開発は10年程度の期間を要し,解体に関する総合的な技術開発の成果等をもとに,後半の期間において,JPDRを活用した解体の実地試験を行うことにしている。また,通商産業省においては実用発電炉の廃止措置に関する調査検討を実施しているほか,廃止措置に係る技術のうち,安全性,信頼性の観点から特に重要な技術の実用化を促進するための確証試験を進めている。


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