第1章 原子力開発利用の動向と新長期計画
1 着実に進展する原子力発電

(4)安全確保の状況

 我が国においては,安全の確保なくしては原子力開発利用の進展はあり得ないとの観点から,従来から安全の確保に万全を期して原子力開発利用を進めてきており,昭和41年に我が国で初めて商業用発電炉が運転を開始して以来,今日まで従業員に放射線障害を与えたり,周辺公衆に放射線の影響を及ぼすような事故・故障は皆無であるという実績からも,今日,原子力発電所の安全性は基本的に確立していると言える。
 特に昭和53年には,原子力基本法の基本方針に「安全の確保を旨とし」と明記されるとともに,主として安全確保のための規制及びその政策を担当する原子力安全委員会が設置され,また,安全規制行政の一貫化が行われるなど安全確保のための新しい体制が発足し,この体制のもとで安全規制の充実,安全研究の推進,安全審査基準の整備等が着実に進められている。
 今後とも安全確保の努力を不断に行い,原子力発電の拡大に対応して,安全確保対策を一層充実させることとしており,このため国は,業務量の増大に対処するための規制体制の充実,強化等を図り,一方,電気事業者は,より一層運転管理を徹底するため,運転員の資質の維持向上,定期検査従事者の技能の維持向上等を図る必要がある。
 なお,昭和56年度に電気事業法及び原子炉等規制法の規定に基づき報告された原子力発電所の事故・故障等は36件,昭和57年度に入ってからは,9月末まで,11件であった。いずれの場合も放射線及び放射性物質による従業員及び周辺公衆への影響はなかった。


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