第II部 原子力研究開発利用の動向
(参考)諸外国の動向

(1)ウラン濃縮

(米国)
 米国のウラン濃縮工場は,米国エネルギー省(DOE)が所管し,現在ガス拡散法による3工場がオークリッジ,ポーツマス,パデューカにおいて運転されている。その濃縮規模は合計で26,400トンSWU/年となっており,昭和58年までに27,300トンSWU/年に拡張される予定である。
 更に,今後の濃縮役務需要増に対処するためポーツマスに遠心分離法による濃縮工場(2,200トンSWU/年)が建設されており,昭和64年に運転開始する予定となっている。

(フランス)
 フランスではユーロデイフ計画(仏,伊,スペイン,ベルギー,イランの共同濃縮事業)に基づき,ガス拡散法による工場がトリカスタンにおいて運転されており,その濃縮規模は10,800トンSWU/年となっている。また,ユーロデイフ計画に次ぐものとしてコレデイフ計画(仏,イラン,ユーロデイフの共同濃縮事業)が進められている。

(英国)
 英国のウラン濃縮工場は,英国核燃料公社(BNFL)が所管し,現在ガス拡散法による工場と遠心分離法による工場の2工場がカーペンハーストにおいて運転されている。
 ガス拡散法による工場は約400トンSWU/年の濃縮規模である。遠心分離法による工場はウレンコ計画(英,西独,オランダ共同濃縮事業)に基づくもので昭和55年より200トンSWU/年の濃縮規模となっており,更に昭和58年までに430トンSWU/年に拡張される予定である。

(西独)
 西独は現在ウレンコ計画に基づき,グロナウに遠心分離法による濃縮工場の建設を行っており,昭和59年に生産を開始し,昭和60年から400トンSWU/年の濃縮規模となる予定である。

(2)再処理

(米国)
 米国の再処理工場には,4つの施設があるが現在運転しているものはない。
 ウエストバーレー及びモリスの2工場は運転を断念し,バーンウエル及びノックスビルの2工場は,昭和52年4月に発表されたカーター前政権の再処理無期限延期政策により建設を中断している。
 しかしながらレーガン政権は昭和56年10月に発表した国内原子力政策において商業再処理無期限延期の解除を決定し,民間再処理を推進することとしており,今後の動向が注目される。

(フランス)
 フランスの再処理工場は,マルクールとラ・アーグの2カ所にある。ラ・アーグにおいては,フランス核燃料公社(COGEMA)が所管するUP-2プラントが稼動中であり,ガス冷却炉及び軽水炉用燃料の再処理を実施している。ガス冷却炉用燃料については,昭和41年から800トンU/年の処理規模で運転中であり,軽水炉用燃料については当該施設の燃料受入施設等の変更により昭和53年から400トンU/年の処理規模でガス冷却炉用燃料の再処理と交互に実施中である。また,軽水炉用燃料の再処理規模を拡大するため,現在新たな燃料受入施設等の建設が行われており,完成すると処理規模は800トンU/年に増強される予定である。
 さらに,日本,西独等の外国からの委託再処理のためUP-3Aプラント(処理規模800トンU/年)を建設中である。
 高速増殖炉用燃料の再処理については,COGEMAにより,これまでラ・アーグにおいて昭和43年から処理規模約0.5トン/年のAT-1プラントが運転されている他,マルクールにおいて現在処理規模約4トン/年のTORプラントが建設されている。

(英国)
 英国の再処理工場は,英国核燃料公社(BNFL)が所管し,ウインズケールにガス冷却炉用の天然ウラン燃料を再処理するため処理規模2,000トンU/年の工場が運転中である。また,ガス冷却炉用燃料及び日本,西独等の外国からの委託再処理のためTHORPプラント(処理規模1,200トンU/年)を建設準備中である。

(西独)
 西独では,主要電力会社12社が設立したドイツ核燃料再処理会社(DWK)が原子力発電所から発生する使用済燃料の再処理を所管している。
 DWK社はカールスルーエに再処理用実験プラントであるWAK(処理規模35トンU/年)の運転経験を有し,さらにWAKの運転経験を基に,昭和60年代後半の運転開始を目途にヘッセン州北部に処理規模350トンU/年の再処理施設の建設を計画している。

(3)放射性廃棄物の処理処分

(米国)
 高レベル廃液は,ガラス固化し,貯蔵した後,地層処分する計画であり,種々のガラス固化法について研究開発を行っている。
 低レベル放射性廃棄物は,民間の処分施設において陸地処分を行っているほか,DOE関係施設からのものは,主に連邦政府運営の処分施設において陸地処分を行っている。

(フランス)
 高レベル廃液は,ガラス固化し,貯蔵した後,地層処分する計画であり,ガラス固化法としては,AVM(Atelier Vitrification de Marcoule)法が実用段階にある。
 低レベル放射性廃棄物はラ・マンシュ貯蔵センターで陸地処分を実施している。

(英国)
 高レベル廃液は,ガラス固化し,貯蔵した後,処分する計画であり,ガラス固化法として,AVM法を採用することを決定した。
 低レベル放射性廃棄物は,原子力発電所からのものはサイト内貯蔵を行っている他,海洋処分と陸地処分を行っている。

(西独)
 高レベル廃液は,ガラス固化し,貯蔵した後,岩塩層に地層処分する計画である。ガラス固化法としては,AVM法の他パメラ法**(Phosphate Glass Solidificationand Metal Emboddingof Liquid Waste)がベルギーと共同で開発されている。
 低レベル放射性廃棄物は,昭和42年から昭和53年までAsseII(岩塩坑)で陸地処分を実施したが,現在は許可手続きの関係で中断している。


  AVM法:フランスが開発したガラス固化法で,高レベル廃液をロータリーキルンで仮焼し,ガラス粉末を加えて溶解炉で溶かした後,キャニスターに封入する方式である。
** パメラ法:高レベル廃液を脱消,濃縮し,ガラス粉末を加えて溶融炉で溶かし,固化する方法で,固化の方式としては,ガラスをキャニスターに封入する方式と,ビーズ状のガラス固化体とし,金属に埋め込んでキャニスターに封入する方式の種類であり,現在,研究開発中である。


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