第II部 原子力研究開発利用の動向
第4章 核燃料サイクル

1 ウラン資源

(1)天然ウランの確保
 昭和55年11月28日,政府は,昭和65年度における「石油代替エネルギーの供給目標」を決定し,原子力発電については原油換算7,590万キロリットル,2,920億キロワット時の供給目標を示した。これに相当する設備容量は5,100~5,300万キロワットとなり,この目標の達成に向けて原子力発電が開発されることとなり,それに伴い必要な天然ウランの需要も増大していくものと見込まれる。
 これに対し,現在,昭和60年代後半までに必要な天然ウランについては,確保済みであるが,それ以降に必要とされる分については,手当てされておらず,今後長期にわたり安定して天然ウランの供給を確保するための施策を講じていくことが必要である。
 現在までに確認されている国内のウラン埋蔵量は,約10,000ショート・トン(U308)程度であり,今後とも飛躍的な増加は期待できないので,我が国が今後必要とする天然ウランは,海外に依存しなければならない。
 現在,我が国の電気事業者は,カナダ,イギリス,オーストラリア等から主として長期契約により,現在までのところ約173,000ショート・トン(U308)の購入契約を締結している。また,ニジェールでの日本,フランス等の合弁事業(アクータ鉱業)により,約20,000ショート・トン(U308)の天然ウランを確保しており,合計で約193,000ショート・トン(U308)の天然ウランが確保済みとなっている。
 経済協力開発機構原子力機関(OECD-NEA)及び国際原子力機関(IAEA)が昭和54年12月に発表した共同調査報告書によれば,自由世界の昭和75年までの天然ウラン累積需要量は,120~210万トン(U)と推定されている。これに対して,自由世界におけるU3081ポンド当たり50ドル以下で採掘できるウラン資源量は,約500万トン(U)と推定されているが,このうち確認された資源量は約260万トン(U)程度であるので,実際の採掘までに要する期間を考慮すると,長期的にはウラン資源の需給がひっ迫し,価格も上昇することが予想される。
 また,現在,確認されているウラン資源が,米国,カナダ,オーストラリア,南アフリカ等の特定地域に偏在しているうえ,ウラン資源国の資源保護政策,資源ナショナリズムの動きが顕著となり,また,核不拡散政策との関連によりウランの供給が停止される事例も見られている。
 この1事例として,カナダが,我が国を始め,ヨーロッパ諸国等との原子力協力協定の改正交渉との関連で,これら諸国に対するウラン輸出を昭和52年1月以来約1年間停止したことがあげられる。
 このような国際情勢の下で,ウラン資源を全面的に海外に依存せざるを得ない我が国は,今後の世界的なウラン需要の拡大に対処し,安定的なウランを確保していくため,供給源を多様化しつつ,新規の長期契約の確保を図ることはもとより開発輸入の比率を高めるため,海外における探鉱開発を積極的に進めることが必要である。

(2)ウラン資源の調査探鉱
 海外における我が国のウラン資源の調査探鉱活動は動力炉・核燃料開発事業団及び民間企業によって積極的に進められている。動力炉・核燃料開発事業団の調査・探鉱予算の推移は,下記のとおりであり,昭和55年度において,同事業団は,アフリカ,南米等における鉱業事情調査を進めるとともに,マリ国を中心とするアフリカ諸国あるいはカナダ,オーストラリア等において単独又は海外機関との共同による鉱床調査を実施した。特に,マリ国においては,昭和56年度には総勢約260人,約19億円の規模で調査探鉱を実施している。

 また,我が国の民間会社も海外でウラン探鉱開発を実施しており,そのうち,海外ウラン資源開発(株)(OURD)は,仏,スペイン,ニジェールとの共同によって設立されたアクータ鉱業に参加し,同鉱業は,昭和53年からウラン生産を開始した。OURDは同鉱業から昭和55年度までに約2,400トンのイエローケーキを引き取るとともに探鉱活動を実施している。また,国際資源(株)(IRSA)についても,ニジェールで精密探鉱を行っている。
 なお,動力炉・核燃料開発事業団の探鉱活動及び地質調査所の調査活動によって現在までに確認された国内のウラン埋蔵量は下表のとおりである。
 また,海水からウランを回収するシステムについては,金属鉱業事業団において,昭和58年度完成を目途に,現在モデルプラントを建設中である。

(3)製錬・転換技術の開発
 製錬・転換技術に関しては,動力炉・核燃料開発事業団において,① ウラン鉱石から溶媒を使用してウランをとり出すための技術開発② 従来の粗製錬と精製錬を電解還元工程を経て直結する一貫製錬法の実用化のための技術開発及び六フッ化ウラン製造能力年間200トンUの製錬・転換パイロット・プラントの建設を行っている。


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